「はい、紅茶」
折原臨也は私の前にカップを置くと隣に座ってきた。
「……で、何から聞きたいの?」
回りくどいのは面倒なので、折原臨也が聞きたいと思っていることだけを話すことにした。彼は手を顎に添えて「うーん……」と唸っていた。
「先に言っておくけど、『全部』とかやめてね。アバウトすぎるから」
「えっ」
全部って言う気だったのか、こいつ……。情報屋なら少しは自分で調べればいいのに。
あ、でも私の正体は調べたのか。推測だったってわけじゃなさそうだし。
「そうだね……じゃあ雪華の目的と罪歌を持ちながら正気を保っていられる理由」
「……目的はにんげんを滅ぼすため。罪歌を持っているのに自分でいられるのはにんげんが嫌いだから」
「具体的に質問させておいて回答は抽象的なんだね」
「誰も馬鹿正直に答えるだなんて言ってない」
「そりゃそうだ」
クククッ、と笑いながら折原臨也は紅茶を啜った。
……とは言っても、実際そうなんだから具体的に答えようがない。
にんげんが大好きな罪歌はにんげんを斬ることでその愛を伝える。斬れば人は死ぬかもしれないのに。罪歌はそれを知らないのか、あるは知っているからこそなのか、にんげんを斬っては愛の言葉で堕落させる。にんげんを『斬る』という点で私と罪歌の利害は一致した。
そもそも私の中にいる罪歌はやる気がない。今回だってあの人に命令されなければこんな面倒なことをしない。
まぁ、いつかはにんげんを滅ぼすために行動を起こさなければなんだけどね。
次に私が罪歌を持ちながらにして普通に生活できていること。……これは折原臨也に話してもいいかな。
「私はにんげんが嫌い」
「? うん、それ会った時に聞いたよ」
「私はにんげんが大嫌い。罪歌が私の中に流れ込んだ時、同じくらいの勢いでにんげんを憎んでみたの。そしたらどうなったと思う?やる気をなくしたみたいなの。罪歌が。圧倒されたのか、愛せないのか……今でもわからないけどね。でもやる気がないとは言え、罪歌は罪歌。やっぱりにんげんを愛さずには……斬らずにはいられないみたい」
私はカップに手を伸ばし、紅茶をゆっくり喉に流し込んだ。折原臨也は興味深そうに見ている。
「たまににんげんを斬るの。今回の事件の発端は、まぁこの『たまに』だった。私は大きくするつもりはなかったんだけどね」
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