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Lapis lazuward
15
「な、なんだ?」
「――泣くなよ」

唐突に、目を触ってきた桜嘉に驚いた俺は
その手を退けようと桜嘉の手を掴もうとした――

泣くな、つったって。

俺は、泣いてないんだが。

――が、その腕は空を掠め、桜嘉が自分から腕を下ろしたことに気づいた。


「お、お前大丈夫か?」
「アンタのが心配」


ずばっと、切り替えされてしまった。

なにがあったんだ、一体……。

俺が、滝のような汗を額から流していると
桜嘉の後ろに静かに佇んでいた涼耶が口を開いた。


「東雲」


桜嘉を呼ぶ低音の声に、

敬称がなくなったことに

不穏な空気を感じとった俺は、涼耶を振り返った。



「”今どなたに触れたのか”あなたは知覚しているのですか?」

その言葉を聞いて、俺は――遅かれながらはっとした。



一般生徒は生徒会役員に触れるべからず

是犯す者、即ち親衛隊の裁きを受けるべし。


「待て涼耶、桜嘉はまだこの学園に慣れていなく……」
「そうですね、天宮様。でも、この方――」

ちらりと、涼耶は桜嘉を見て

「神山会長の直行エレベーター付近で姿を見かけたと、親衛隊一部から報告が上がっているのです」

にこやかに俺に告げる姿は、淡々としたもので感情など感じられないが。

静かな青い嫉妬の炎のようなものが、見え隠れしているように思えた。

「それは、会長が無理矢理……」

「神山様は公平なお方です。今まで生徒会の方々以外誰も近づけなかった領域を
犯しているネズミは明らかでしょう?」

違う、桜嘉が悪いわけじゃない。

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