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Lapis lazuward
06
面倒だから事件には突っ込みたくはないけれど

人には良く”お人よし”の烙印を押されるからか、

結果的に自分から事件に突っ込んでいってしまうことがあると、少しは自覚している。



だが、今回の場合は怪我をしている人の手当てだろ?



だからまさか、その相手が襲ってくるなんて思って行くわけないじゃないか。


「うあ、ちょっ、待て待て待て待て!!!キモいキモい!!」



なんで、こんなことに――?!

なんて、回想に浸っている時間なんてない。


ああ、ほら、何でか知らないけれど上着は脱がされて、俺の白いシャツは今や全開。
その上、シャツが腕に纏わりついて両腕が自由を失っている。


がっと、顎を掴まれて顔を持ち上げられ
猫科を想像させるような、軽薄そうな目とかち合った。


絶・対・絶・命!!!


く、喰われる!誰か、助けてーー!!銀慈ー!銀慈ー!!

「ち、近寄るなよ……」

顎を掴まれているから、しゃべり難いことこの上ない。
ちくしょー!離せこの変態!!
俺が、我武者羅に暴れていると、それすら楽しそうに見つめながら

「やだ」

と子供のような言葉が返ってきた。

嫌だとはなんだー?!俺の方が嫌だっての!!

視線を離さないまま、奴はゆっくりと自分の唇と俺の血の気の引いたそれを合わせた。
先ほどまで顎に置かれていた手は、俺の頭の裏側に回っていた。


「……んぅ、んん……っ」


―――何で俺いきなり、助けにきた怪我人にキスされてんの?!

息ができなく、鼻で吸うなんていう高等技術を極めていない俺は
つい口を開いてしまった。そこから奴の舌が進入するなんて、思わずに。


「んん!……はっ、……んぅ!!」


縦横無尽に動き回る奴の舌に完敗した俺は、されるがまま受け入れざるを得なかった。
腕と頭を固定され、両太ももには奴のもう片方の手が上から押さえつけられ
身動きが取れなかった。

たった一本の手で、両足動けなくなるなんて
二年前に応戦したときよりも、さらに力をつけたのかもしれない。


「ぅは……柔らけー……」


ようやく離れた生暖かい唇は、横に引かれ「ごちそーさま」と薄情に言った。

いかにも卑下た笑みに、悔しさに自分でも目が潤うのがわかる。

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