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Lapis lazuward
01
ゆらり、ゆらり。
船をこぐような緩やかさで俺の体は左右に揺れていた。

「おい、聞いているのか?」
「ええ、はい、聞いています。転入生を捕まえて来いとのことでしたね?」

それ以外のところは全く頭の中まで入ってこなかったが、
まあ……なんとかなるだろう。

「ああ、Lepus(レプス)は逃げ足が速いから逃げられないよう気をつけろよ」
「わかりました。近日中に標的を捕獲します」

ったく人使い荒いったらねーな。他の役員も見当たらないし、例の転入生相手に
こんだけの人数使う必要あるのかぁ?

つい三日前に転入してきた生徒に、俺の目の前に座る
神山清峰(こうやま きよみね)会長は熱を上げてしまっている。

それもそのはず、その転入生は会長がずっと片思いしていた相手だからだ。

会長席には写真立てをいくつも並べ、会長専用PCの壁画もその人の画像が
使われている。ここまでくると、いっそ気持ちが悪い。

なので、顔だけは知っていた。
というよりも……”顔も”合わせたことがあるから、もっとよく知っているのだが。

「優、今日中だ」
「――は?」
「今日中に連れて来い」

自分の考えに沈んでいた俺の意識が、会長の発言により呼び戻される。

なんだって?!今日中?!
今まで靄がかかっていたような目の前が、一気に開ける。

今日中だあ?!

「お前なら出来るだろう?我らが生徒会副会長殿」

綺麗な顔をニヤりと悪人っぽい顔に変えてそういう会長は、
どこの番組の悪者よりも一層似合うような気がした。

アーメン。

頼むから、動かないでくれよ可愛い小うさぎ(レプス)ちゃん。

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あきゅろす。
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