短編小説
ぜくすい
※このお話が好きな管理人は期間限定でこっちにUPしてしまいました(汗
疲弊しきった足取りで帰宅すると、俺のベッドで高野さんがゴロゴロしていた。
他人の家で、何だってこう寛いでいるんだこの人は…!
「お、おかえり。おっ前帰り遅いなぁ。何してんだよ」
ムカつく…!!!
「ただいまです!誰かさんがこんなところでゴロゴロしているから俺の仕事が増えたのかもしれないですねぇ!!!」
「おま、なんだその言い方。夕飯作ってやったのに」
「え?ええ?あ、…いただきます…」
「どーぞ」
…いまいち納得がいかないまま、荷物を片付ける。
なんだか丸め込まれた気分だが、夕飯も作ってもらっているし、何より合鍵を渡したのは自分だ。
俺としては緊急時(怪我とか病気とか)だけに使ってほしいのに…。自分の読みの甘さを後悔しても遅い。
と、ふと机の上に普段には絶対手に取らないような類の雑誌が4〜5冊。
「高野さん…これ、何ですか?」
それは所謂、結婚情報誌だ。
ウエディングドレス姿の女の人が、ニコニコ笑いながらこっちを見ている。
「ああそれな。作家が資料で使うっていうから持って行ったのに、ネームの進みが遅くて今日は使わなかったんだ。また来週持って来いだと」
「そ、そうですよね。資料ですよね…アハハ」
自分では絶対買わない雑誌なので、少し興味が沸いてきた。パラパラとめくっていると
「なに?お前も結婚式挙げたい?」
突然後ろから耳元で話し掛けられ、ビク!と肩が震えた。
「誰と誰がですか!」
「俺とお前。決まってるじゃねぇか」
「馬鹿なこと言わないでください!!」
「新婚旅行はどこ行く?やっぱ南の島?俺はヨーロッパがいい」
「勝手に妄想してろ!」
「ったく、冗談の通じねーやつだなー…」
ぱこ!と雑誌を丸めて高野さんの頭を小突くてそのまま冷蔵庫へ。今日はもう夕飯食べてとっとと寝る!
「いてーな…夢見るくらいいーじゃねーか。お、最近の雑誌こんなんまで載せるんだな。《☆結婚の夢と現実特集☆》『結婚は人生の墓場だと聞いているのでイマイチ踏み切れません。どうしたら良いでしょうか(20代・男性)』だってよ」
「知りませんよそんなこと」
「……俺と一緒にいたくないのかよ」
「ハイハイ」
姿が見えない場所で問答をしつつこっそり覗くと、高野さん、ちょっと落ち込んでる…?
…俺が悪いみたいじゃないか。
………ああもう、しょうがないなぁ。
てこてこてこ。ぽすん。
高野さんが寝ているベッドの脇に座って、雑誌を取り上げた。
「高野さん。結婚は人生の墓場なんですって?」
「ん?ああ、どうした」
「高野さんとは、死んだって一緒の墓場ですからね」
こんなに好きさせておいて。
「責任、取って下さいね」
囁きと共に、そっと高野さんの顔に唇を落とした。
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