短編小説
夜空の魔法
高野さんと一緒の帰り。電車に乗っていると扉前の掲示板に「今日は十五夜、満月です」とニュースの文字。
そういえば、ここのところ周期(臭気?)に突入していて夜空を見上げる余裕すら無かったなぁ。徹夜ばっかりだったし。
駅を出たあたりではまだ曇り空に隠れてしまっていたけれど、今はどうかな。
自宅に帰ってふと窓の外を見ると、夜空にぽっかりと、真ん丸い月がこちらを見ていた。
「うわぁ…」
なんで月って、丸いだけでとってもきれいに見えるんだろう。
「小野寺、どうした?」
「あ、高野さん」
今日も俺の家に上り込んで夕飯を食べていた高野さんは、御礼にと皿洗いをしてくれている。
「見てくださいよ、高野さん。今日、十五夜なんですって」
「へぇ」
キュ、と水道の蛇口を締め俺の隣に来る。
「高野さん」
「ん?」
「……………月が、綺麗ですね…」
「…………お前、」
「?何ですか高野さん?」
「いや、何でもない」
「何でもって、…んんっ…」
突然、頭を引かれ強引に口付けされた。
きつく抱きしめられながら下唇を甘噛みされて、舌でなぞられる。…それだけで、息が上がってしまう。
「んっ…ふっ…ぷぁっ!はっ…たた高野さんいきなり何すんですか!」
やっとのことで上半身をべりっとはがし抗議すると、ワンテンポおいて、ぎゅうっと抱きしめられる。
「月が、綺麗、なんだろ?」
……あ!
耳元で囁くように低い声で真意を問われ、無自覚に発した言葉の意味を理解した。高野さん、知ってる。
でもあれは、本当に月が綺麗だと思ったから…。
「もう一回、ちゃんと言え」
なのに、高野さんはこれ以上ないくらい優しい笑顔で、俺の顔を覗き込むんだ。
ずるい。
顔も耳も真っ赤にしているであろう俺は、ぽすんと彼の胸に顔をうずめる。
「…月が、綺麗ですね」
「俺も」
この気持ちが、ずっと続きますように。
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…全然えっちくない(・ω・)
意味不明な方は、夏目漱石・月が綺麗ですね で調べてみると幸せなことがあるかもしれません!
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