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無双☆短編
こわい夢 (甘陸)


「オラオラオラーーーッ!!」


威勢のいい声と共に、鳴り響く鈴の音。
甘寧が無双乱舞をかましていた。

しかし、そこは呉の城内。
「コラーーッ!甘寧っ!!」

そりゃ、もちろん怒られる訳で。


猛スピードで走る甘寧の前に、呂蒙が立ちはだかった。それでも止まろうとしない甘寧。呂蒙はため息をつくと、すっ、と甘寧の前に足を出した。


ガスッ、ドサッ
ずぞぞぞぞーーーっ


甘寧は、豪快にコケた。


「―――っ痛てぇっ!おっさん!何しやがるっ」
鼻を押さえながら甘寧が言う。
「何しやがる、じゃないぞ甘寧!城内で無双乱舞やる奴があるかっ!しかも、朝っぱらから!」
呂蒙も負けじと言い返す。
「だってよっ急いでんだぜ?いいじゃねーか、別に」
甘寧が言った。
「良い訳ないだろう?ほら、見てみろ」
そう言って呂蒙が指差したのは、甘寧が走ってきた廊下。
甘寧の無双乱舞に驚いた兵士達が数人、廊下の隅で固まっていた。

「お前のせいで兵士達が怯えているだろう。それに、万が一無双乱舞が当たりでもしたら―――」
「へいへい、分かった分かった」
甘寧はつまらなそうに言うと、急いでんだ、と言って再び無双乱舞で走り去った。
「コラァ―――ッ!!甘寧っ!」
叫んだ呂蒙の声は、もう甘寧には聞こえなかった。呂蒙は再びため息をつくと、
「そんなに急ぐ用事って一体……?」
と、つぶやいた。





甘寧は一つの扉の前で立ち止まると、その扉を勢いよく開けた。
「陸遜っ!!」
甘寧は部屋で机に向かっている陸遜に、声をかけた。
陸遜は顔を上げると、一瞬、驚いたような顔をした。が、すぐ笑顔になった。
筆を置き、甘寧の元へ歩み寄る。
「おはようございます、甘寧殿。こんな朝早くに、どうしたんですか?」
陸遜が優しく微笑んだ。そして、甘寧の息が少し切れている事に気付いた。
「甘寧殿、もしかして、走ってきたんですか!?」
心配そうに自分を見上げる陸遜を、甘寧は無言で抱きしめた。







こわい夢を見た。
君を抱きしめようとしたら、消えてしまう夢。
目が覚めたら、急にこわくなって、君の元へ駆け付けたんだ。
優しく微笑む愛しい君が、消えてしまわないように。



  −END−

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あきゅろす。
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