250.つもりつもって、くずれおちて/ガンスト/レミー

僕はもっと素直に言えたら良かったのかな。でもこの歪んだ心は誰にも見せたくないし、見せちゃいけないんだ。

「ユーリ」
「ああ、君か」

夜中に彼女の部屋まで降りて行ってミルクティを要求する。きっと彼女は言葉で言わずとも分かっている。僕がブライアンのところに来てからと言うもの、寂しかったり寝れなかったりすると出向いているから。

彼女は何も言わず、ちょっとぬるめの甘いミルクティを出してくれる。

「ユーリはまた何かしてるの?」
「ああ、うん」
「むー、何してるの……?」

彼女はコンピュータから目を背けずに淡々と喋る。僕のこと興味あるって言ったくせに、そういう態度は納得がいかない。

「管理してる」
「もー、あんたは一々聞かなきゃ全部答えられないの!?」

ミルクティをだんと机に叩きつけて我ながら子供みたいだ。ユーリはコンピュータから目を離して僕をじっと見た。暗がりのせいか、幾分か彼女の目が細く見える。

「声が大きい」
「 ユーリの馬鹿!」

飲みかけのミルクティを置いて、部屋を出ようとすると腕を掴まれた。一体いつ移動したのか。聞くだけ野暮というものか。

「私が本当に馬鹿だと思うならこの手を振りほどけばいい」
「……ユーリは馬鹿だ」
「なら、」
「どうして僕に意地悪するの!? 嫌いになったの? 憎いの?」

かっとなって彼女の腕を掴んだ。ユーリはただ僕をじっと見るばかりで何も言ってくれない。拒絶されるのはもう嫌だ。お願い僕のことを嫌いにならないで。

「君は泣き虫だな」
「泣いてなんかない、これは……」

ユーリがそっと僕を引き寄せる。あたたかい。彼女の心の声はやはり未だに聞こえないけれど、彼女の言いたいことはわかった。僕は、もう少し大人にならなければ。こんなくだらないことで騒ぐのは痴態だ。

「レミー、おやすみ」
「ずるいよ……」

ふと体から力が抜け、僕はそのまま眠りについた。

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あきゅろす。
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