251.残ったものは伝わらない愛ばかり/アレン
「……死んでしまったらそれで終わり」

彼女は気だるそうな表情で読んでいた本を閉じると、暖炉の前にある小さなテーブルにそれを置いた。近くで作業をしていた僕は手を止め、歩み寄ってきた彼女にストールを掛ける。

「もう寝るんですか?」
「頭が痛くてね。風邪引いたみたい」
「最近は任務ばかりでしたから、休むといいですよ」

そういって彼女の肩を抱いて、もう片方の手で柔肌に触れる。彼女はくすぐったいのかおかしいのか、くすくすっと消え入りそうに笑って僕の誘導のまま部屋へと入っていく。

「アレンは寝ないの?」
「ユーリが眠るのを見届けたら」

彼女をベッドに横たわせて、僕は端に座って手を繋ぐ。

「おかしな人」
「そこは優しいって言ってくれませんか?」
「さあ?」

ユーリは苦笑いするとそのまま目を閉じて、すうすうと眠り始めた。

「これで、終わりなんて」

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あきゅろす。
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