男前彼女(佐久間次郎)
「あのさ源田、最近佐久間が私の事避けるんだけど」
「避けるんだけど、と言われてもな………何か思い当たることはないのか?」
「ないから聞いてるの!」
少なくとも一週間前までは普通だったはず。確か一緒に買い物に出掛けてからだ、佐久間が私を避け始めたのは。
でも、特に変わったことは言ってないと思うんだけどな……。寧ろいつも通りラブラブだったはずだ。喫茶店で世間話しして、ペンギンのぬいぐるみプレゼントして、ペアリング買って………ってまさか!
「ごめん源田、佐久間捜してくる!ありがとね!」
「あ、あぁ………頑張れよ」
不思議そうな顔をしている源田に御礼を言って佐久間を捜しに走り出した。
校内にはいなかったから、いるとしたら店から佐久間の家までの道だな。とりあえず佐久間の家に行ってみればわかるだろ。
「と、そのまえに………」
佐久間のなくし物を取りに行ってあげようかな。心当たりありありなんだよね、佐久間の鞄漁ってたりロッカールームに忍び込んだところ見た事あるから。佐久間が好きなのはわかるけど、犯罪行為を起こすのはやめて欲しい。私の可愛い彼氏だからね。
うん、私ってば彼氏想いの良い彼女じゃん。佐久間ってばこんな彼女が持てて幸せだねー。
「ってわけで、盗ったもの出しなよ」
「何よあなた………言い掛かりつけるのは止めてくれない?」
教室にいたので笑顔で手を突き出すと、一瞬怯えたような表情をしたがAさん(名前知らないし知りたくもないからこれでいいでしょ)は睨み付けて来た。
私の佐久間に付き纏う虫を追い払う良い機会だね、手加減せずに潰させてもらうよ。
「言い掛かり?へぇ………じゃあこれあなたじゃないの?」
「っ!?な、なんで………」
「私を舐めないで欲しいね。今後私の佐久間に付き纏うようなことがあれば…………警察に突き出すから」
「ひっ………!」
写真を突き付けながら笑顔を消して睨み付けると、Aさんは真っ青になって椅子から落ちた。ま、自業自得だから心配なんてしないけれどね。
それから怯えるAさんから全て返してもらい、教室を後にした。帰るときに道がさっと割れたのには少し驚いたけれど、一刻も早く佐久間に会いたいからこの際気にしないことにした。
「ここにもない………どこにいっちゃったんだよ………」
「佐久間!」
「っ、凜………」
キョロキョロと辺りを見渡しながら捜し物をしている佐久間に声をかけると、佐久間はこっちを見て今にも泣きそうなくらい顔を歪めた。
佐久間にこんな顔させたんだ、もう少しくらいきつく当たっておいても良かったかもしれない。
「ごめんっ……俺、凜がせっかく買ってくれたペアリング……」
「はい、これ」
「え………?」
地面を見つめながら話す佐久間の目の前にペアリングを差し出すと、佐久間はばっと顔を上げてしばらく私とペアリングを交互に見比べた。
なくしたことで怒られるのを怖がってるのか、なかなか手を伸ばさなかった佐久間だったけど、私がもう一度繰り返すとびくびくと様子を伺いながらもペアリングを取って指にはめた。
ホント、佐久間は可愛いなぁ。
「今回は特別に許してあげる。佐久間のせいじゃないからね。ただし、次なくしたときは覚悟しておいてね」
「凜っ!」
「うわっ!ちょ、佐久間……?」
ニッコリ笑って許してあげると、佐久間は勢いよく抱き着いて来た。支え切れずそのまま地面に倒れ込んだら、佐久間はさっきよりきつく抱きしめて来た。
「全く、しょうがないな………」
肩の辺りに顔を埋めている佐久間の背中に手を回すと、佐久間はいきなり顔を上げてキスをしてきた。
あまりに長いから苦しくなって、叩いて抗議するとようやく唇が離れた。
「絶対なくさない。愛してる、凜」
「私も愛してるよ、次郎」
可愛くてペンギン好きで女の私より女の子っぽいけど、サッカーやってる時の佐久間は誰よりもかっこいい。
そんな佐久間が大好きだよ。
(はい佐久間、あーん)
(あ、あーん)
ぱくっ
(美味しい?)
(美味しいけど………恥ずかしいな……)
(ふふ、可愛い)
(なぁ鬼道、あいつらどうみても立場……)
(逆、だな………)
あとがき
佐久間が可愛いくて仕方がない。
鬼道さん鬼道さん言ってる佐久間が好きだ。
でも佐久間は左、絶対左。これは譲れない。
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