main
それでいい(2010バレンタイン染吹)


「はい、染岡くん」
笑顔を満面に広げた吹雪が差し出すのは、ご丁寧にリボンまでついた青色のラッピング袋。
「…さんきゅ」
とても細かい包装だったが、これは店のラッピングではないだろう。きっと、吹雪自身で包装したものだ。
ということは。

リボンを解き、中に入っていたものは生チョコだった。とても綺麗に出来ていたが、やはり店の物ではない。

「頑張って作ったんだぁ」
吹雪は目を細めて微笑んだが、それとは対照的に、やっぱりそうか…と染岡は自嘲気味に呟く。

「え、手作り駄目だった…?」
不安そうな表情をする吹雪。
こいつの曇り顔は見たくない。染岡は慌てたように
「そうじゃねえよ」
と言った。
駄目じゃない。寧ろ手作りの方が心がこもっている気がして嬉しい。
が、
「お前ってやっぱ…すげぇよな…」
成績優秀、運動神経抜群、ビジュアルも良い、性格も良い。
それに加えて料理上手、だなんて。
自分とは大違いだ。
改めて、何故こんな自分を吹雪が好いてくれるのか分からない、と染岡は複雑そうな顔をした。
だがそんな染岡の表情を汲み取ってか、吹雪は
「染岡くんはかっこいいよ」
と呟いた。

「僕、染岡くんみたいな人に初めて会ったんだ。ちょっと乱暴だけど仲間を思う気持ちが誰よりも強くて、優しくて。僕が持っていないものを持っているよ」
だから大好き。
と言って吹雪は微笑む。

染岡は半信半疑な顔をしていたが、やがて気が抜けたように苦笑した。
「お前には羞恥心ってものが無いのか」
「そりゃ、人並みにはあるけど」
吹雪はそう言いつつ染岡の手を掴み、自分の心臓に押し付けた。
「ほら、ドキドキしてるでしょ」
僕、染岡くんといる時はそんなに格好良くないよ、と彼は照れたように笑ったが、染岡はそれでいい、と一言だけ呟く。
それを聞き、彼はとても嬉しそうに笑った。



ーーー後日、吹雪の作った生チョコを食べた染岡はその美味しさに驚くと共に、
1カ月後に迫っている例のイベントでは俺も頑張らないとだな…と心の中で密かな決意を燃やしたのであった。


fin


2010/2/14

[*前へ][次へ#]

9/19ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!