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全てはこの暑さの所為(染吹)
あちぃ、と俺が言うと吹雪はそうだね、と言って笑った。
「そうだね、じゃねぇよ。お前全然涼しそうじゃん」
えー、と言いつつまた笑う。こんな暑さの中よく笑えるな。
「染岡くんは暑がり?」
「ん、まぁ。暑いのも寒いのも好きじゃねえ」
「そっか。僕もね、東京は北海道よりも全然暑いから、初めは耐えられなかったけど」
でも少しは慣れてきたかなー、って、全く、順応するのが早い奴だ。
「でもここまでくるとやっぱり暑いよ、汗とか結構滴るし」
そう言われてみれば確かに、首筋につつと垂れる雫が見えた。
透き通るように白い首筋は、自分のそれとは全然違う。
…妙な気分だ。吹雪の笑いを含んだ無邪気な声と無防備な白い首筋。
真夏の練習帰り、自分と一緒で汗臭いはずだ。
だから近寄りたくない、そう思っているのに。
何故だか身体が近づいてゆく。
でもそれは俺の意思じゃなくて、あれだ。ただ単に暑さで本能がいかれちまっているだけだ。
ーーだから俺は悪くねえ。
意味もなく自分に弁明をして そして俺は夏の火に入る虫の如く、
fin
2010/7/25
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