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帰り道(染吹)


「皆、今日もお疲れ!」

円堂のその言葉で今日の部活は終了した。
一斉に部室に戻り、服を着替えてから各自解散となる。
俺は服を着替え終わってから、鞄にユニフォームを無造作に押し込んだ。
吹雪はそんな俺の様子を見てくすり、と笑う。

「…何で笑うんだよ?」

吹雪の笑顔が嫌いなわけではないが、自分の姿を見て笑われるのは心外だ。
だが、俺がそう言ったにも関わらず、吹雪は屈託もない笑顔で笑いつづける。

「あはは、何だか染岡くんらしくって」

何が面白いのかさっぱり分からず、俺は一人首を傾げるばかり。

「…っ、もう何でもいいから!帰るぞ!」
「うん」

ニッコリと笑った吹雪を横目で見つつ、部室を出て、交差点のところまで
歩いていく。

「ね、今日のシュート凄かったよ!本当に染岡くんは格好良いや」

吹雪がニコニコと笑って俺の方を見る。

(…………っ…!)

ただそれだけなのに何だか息が詰まってしまって、俺はどうしたんだ、と思う。
話している相手が、例えば、風丸だったらーーー普通に受け答えするだけ。
動揺する理由なんてどこにもないはずだ。

「…どこがだよ。今日シュート3回もミスったぞ」
「でも4回目には成功していたよ!」
「まぁそうだけど…」
「染岡くん、本当に格好良かったなぁ…。」

そんなに「格好良い」を連呼されると正直少し恥ずかしいのだが、
そんな 考えを持つこと自体が女々しいのではないか、とも思うのでそこには深く触れなかった。

「………あ。染岡くん、見て!」

ふいに吹雪が大声を出した。指差す方向を見ると、豪華なイルミネーションで飾り立てた家。

「…もう、こんな季節だもんな」

東京なので雪などは滅多に降らないが、この季節になってくると流石に寒い。
目には見えない冷気が漂っているような気がして、俺は体を縮みこませた。

「うん、イルミネーションがあるとあったかい感じがして良いよね」
「でもお前、寒くないんだろ?」

北海道に住んでいたのだから、これくらいの寒さには強いはずだ。それなのに吹雪は、

「でも、やっぱり寒いものは寒いし…。あ、そうだ!」

そう口にした途端、いきなり俺の手をギュッと握った。

「な………ッ!!!」

俺の顔は驚きやら混乱やらでさっきまで冷えていたのが嘘のようにかあっと熱くなった。

「おま…!誰かに見られるだろ!」
「大丈夫、誰もいないよ。それに、あったかいでしょ?」

えへへ、と照れ笑いを浮かべる吹雪だったが俺にはそんな余裕はない。
ゆでダコのように赤くなっているであろう自分の顔を想像するだけで、
ふつふつと恥ずかしさが込み上げてくる。
だが、確かに繋いだ手と手は温かくて、温かかった。

だから。そういう体温とか、たまに触れる肩、とか。その儚げな笑顔とか、つい抱き締めたくなるじゃねぇか。

(…って何考えてんだ俺……!?)

俺は、吹雪といるとペースが崩れるのだ。
いつもはおっとりしているのに、いざという時は強気で物事をはっきりと言う。
もしかしたら俺は、こいつには適わないのかも知れない。
そんな事を認めるのは癪だが、きっとそうなのだ。

だから
俺がこんな衝動に駆られるのも、0.1秒後にとる行動も、

吹雪、全部お前のせいだからな!


fin


2009/12/23


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もう読み返す勇気がないです(吐血)


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あきゅろす。
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