せんせいと二人っきり、油断していた。この状況。 つぎの授業は、だいきらいな数学でまったく受ける気がしなくなったので、わたしは屋上にさぼりにいった。今日は天気がいいからなあ、と思いながら階段を駆け上がり、屋上への扉をあけた。 ちくしょう、同じ考えのやつがいたか。 「……銀八せんせい、なにやってんの」 「あーれーなまえ!じゃん。なにって見てわかりませんかね」 「ちがくて、せんせいがサボっていいんですか」 「俺こころは中2だから」 「うーわっ、わたしよりガキじゃないですか」 「るせーよ」 せんせいはそう言うと、柵に寄り掛かってわたしを手招きした。なに。隣にこいってか。 「ひまじゃね?」 「そうですね」 「なんかしたくね?」 「たとえば?」 「えー、鬼ごっこ?」 「せんせい本当に頭中2ですね」 「ちがう、俺は頭じゃなくて心が中2なの」 どっちでもいいよ、わたしは心の中でつぶやいた。 てかこの人、今授業ないのかな。サボっててだいじょうぶなのかな。 (そしてなぜ白衣なのかな、この国語教師) するとせんせいはその(なんか薄汚い)白衣のポケットに手をいれてごそごそしはじめた。なにがでてくるのかと思ったら、ピンクやら黄色やら水色の色とりどりの飴玉をとりだした。 せんせいはその中の黄色の飴玉をとって、自分の口にふくんだ。 「…せんせいのポケットはドラえもんですか」 「糖分は常に摂取しねーとな」 「あっそうですか」 「なまえ!もいる?」 「じゃあいります」 えっ、 にやりとわらったせんせいはわたしに口付けし、それと同時に口の中にレモンキャンディーの味がころがった。 「なっななな」 「いえーい、なまえ!いただき」 「はあっ?」 「あ、鐘なった。じゃっ俺もどるわ」 「ちょっ…」 屋上にはわたしと黄色の包み紙だけが残された。 危険信号、黄色のシグナル 口の中にひろがるレモンキャンディーの飴が、なによりも証拠 1001 (みこチャ提出) まえつぎ |