[携帯モード] [URL送信]


水曜日、雨


もう頭の中は完璧にパンクしていた。昨日あのこと電話を終えたあと、もう考えるのも嫌になったので寝ようと思った。が、目をとじた真っ暗な世界にアイツの顔が映し出されて、寝るに寝れない。くちびるがまだ覚えてるんだ、アイツの感覚を、間近でみたアイツを、アイツの真剣な眼を、どうしよう!
気付いたらもう水曜日になっていた。雨の、じめじめとした水曜日。あたしは仮病をつかって休もうとしたけどお母さんは全くだまされず今日も家を追い出された。学校いくしかないのか。あたしはかわいくもないビニール傘をさしていつもの道をいく。
そうゆう運命なのか。昨日あのこにアイツがキスしてきたんでしょ、じゃあなまえ!に気があるってことじゃん?とか言ってきたけど、アイツだよ?毎日女子に対するセクハラ発言の絶えないアイツだよ?絶対あたしの気持ち知りながらからかってんだよ。とか考えてる間にもう学校ついちゃったし、しょーがないな、今日は保健室で一日すごそう。とりあえず朝のSHRだけでもでよう。

「あ、なまえ!おはよ」
「…おはよう」
「なーに?改めて告りにきたんだやっぱり?」
「やっぱりてなによ、違うよ馬鹿」
「あーすみませんね」

あのこはにひひとまた笑って自分の席についた。その笑顔がまたイラっときて仕方ない。これ以上あたしの気分を下げるのはやめてくれ。腹たつな。そんなんじゃないっつーの。

「あーほら席つけぇ」

ゆるーいいつもの声で、やっきた。教壇に、たっている、いつもとかわらない、アイツ。………銀八。
顔を見たとたんに昨日のことがまた脳内でフラッシュバックしてしまい、銀八を直視できない。ああ、どうか昨日のことは忘れてくださいせんせい。お願いだから、無かったことにしてください。そう、あたしと銀八は教師と生徒。そんな関係、ゆるされない、そんなこと先生が1番わかっている筈だ。

「えーと、あとみょうじ!は、SHRおわったら俺のとこくるよーに、はい以上」

名前を呼ばれてはっとなり、顔を上げた。なんでわたしが呼び出せれなくちゃいけないの。先生は、一体なにを考えているんだ。先生、せんせい、銀八、

「せっせんせー!わたし気分悪くて保健室いくのであとにしていただけませんですか」
「あー、そうなの」

……あたしは極限下をむいて銀八に話しかけた。そしてすたすとと、そりゃあ先生を避けるように教室をでた。だめだ、心臓がもつわけない。またどきどき、ばくばくと心拍数があがる。銀八も見れない、目が合うのが怖い。昨日の話をされるのがこわい。


保健室は真っ白で、無駄なことを考えなくてすんだ。だけど保健室の先生は今日は欠席らしく誰もいなくてそのうえ外で降っている雨の音のせいでさびしさが増した。ただベッドで寝転んでなにもかわらない変哲のない壁を見ていた。ただ、ずっと。ぼーっと。

あぁ、だめだ。

やっぱりうそ、ごめんなさい。あたし銀八のことばかり考えている。頭のなかが、銀八のことでいっぱいで、もう溢れ出してもおかしくないくらいなのだ。ぎゅっといたむ、心臓が、なによりそれを物語る。

「なまえ!ー、いる?」

どき、。その声の主は確実に部屋の一番奥で密閉されたわたしの寝ているベッドに近づいてきている。あけないで、おねがい。こないで、近づかないで。今のあたしじゃ、絶対おかしくなる。また、昨日みたいに。

「いた」
「銀、八、せ、んせい」

ばちん、と目が合った。銀八は、あたしを見下ろす。あたしは気まずくて思わず目をそらした。なにしに来たの、授業は大丈夫なの、どうして来たの、

「なに、風邪?」
「気分、わるくて」
「ふーん」

ふーん、てなによ。興味ないなら聞かないでよ。心配してないならわざわざこないでよ。なんで、どうしてあたしにかまうのよ。こんな、期待しちゃうじゃない。あたしはバカだからキスされたり、あたしに会いにきてくれたりそんなことされたら!

「せんせいのばか、あほう、へんたい」
「……な、なにいきり、俺まだなんもしてなくね?」
「まだってなんかするつもりなんですか変態」
「なにその変態って語尾?」
「……ちがうから変態」
「あー俺のこと?」
「………せんせい」
「なによ?」
「なんで昨日…キスしたの」

あたしはそう言うとちらりと銀八のほうに目をやった。銀八はうーん、とかいいながらあたしの寝ているベッドの横のパイプ椅子に座ってあたしをみた。
また、あの眼だ。

「なんでって…、俺もすきだもん、なまえ!が」

銀八はひとりできゃー言っちゃったとかいって顔を隠したりして(指の間からあたしを見るな)ゴホン、と咳してまた言った。

「俺と付き合いませんかなまえ!ちゃん」

そんなばかげた告白があたしはうれしくておどろいて、唖然としていたら銀八がなにその顔は、もっと喜べとか言ってきた。その時のバカなあたしにはそんな銀八の声や雨の音さえも、とてもロマンチックなものに聞こえてしょうがなかった。



(わかっていたけど 好きな気持ちは止められなかった)



20060928
20070902加筆修正
(火曜日、晴れのつづき)


まえつぎ

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!