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ピンクの唇をなぞる貴方の親指


学校を終えてからひさしぶりに万事屋へ行ってみた。そしたら銀ちゃん一人だけで、ぐーたらと炬燵で横になっていた。なんてだらしないんだろう、あたしはこんな大人にはならないぞと心の中で思ってみたけどこんな大人が好きなのはおまえだろ、なまえ!と自分につっこんだ。
外は息が白くなるほど寒く、それに比べれば中は暖かかった。だれか暖房買ってあげてよこのダメ人間に!


「銀ちゃん…」

「あー?あれ、なまえ!ちゃーん……制服とかなに?誘ってんの?」

「一言目がそれってまじありえない」

「まーまー怒るなよ、ほら寒いだろ入りなさい」



銀ちゃんはそう言うと横を開けてくれた。あたしはそんなちょっとしたやさしさが好きだ。とか心の中で思ったらなんか恥ずかしくなって銀ちゃんに顔を見られないように炬燵に座った。(銀ちゃんはまだ寝っ転がっている)

それにしても炬燵に入ってるのにまだ体は冷えたままだ。炬燵はまだつけたばかりらしく、あんまり暖かくはなかった。空気が乾燥しているから唇が荒れそうだとふと思って、ポケットからリップクリームを取り出した。体温で生温くなったリップクリームを唇につけた。するとさっきから「あー」とか「うー」とか「さみー」とか呻いていた銀ちゃんがいきなり黙ったので横を向いたら目が合った。



「……なに、見てんの」

「なまえ!のこと見てたらいけねーのかよー」

「そんなことないけど…なんかあるのかと思って」

「いや、別に…まァあるっちゃあるが、」



そんな意味不明なことを言いながら億劫そうに銀ちゃんは起き上がってあたしに寄り添うように座った。



「なまえ!、知ってっか?」

「なにを?」

「あのなー、キスするじゃん」

「は?はあ…、」

「おまえさ、そんなん唇につけるじゃん」

「あー、うん」

「あれな、すっげー不味いんだよ」

「へえ」

「だからよォ、」


そういうと銀ちゃんは炬燵にいれていた右手をあたしに近付け、親指であたしの唇をやさしくなぞった。(あー、リップクリームがとれる…)
そのあたしの唇を触る指がなんだかやらしくて不覚にもドキドキしてしまった。そして銀ちゃんはそっと指を離すと、キスをしてきた。


「なっ、」

「やっぱこっちのが美味ェわ」

「…あっそう」









どうやらリップクリームは不要らしい




        20061214

まえつぎ

あきゅろす。
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