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薔薇(BL)
骸雲(甘)


「え………。」

校内の見回りを終え、いつものように応接室の扉を開けた雲雀は、
部屋の中を見るなりその場で固まってしまった。


燦然と降り注ぐ太陽に純白の砂浜。更にその先には、地平線の彼方まで続く蒼き海。
雲雀の目に飛び込んできたのは、そんな真夏を思わせる綺麗な海岸の風景だった。

雲雀は一度後ろを振り返り、自分が此処に入る前にいた場所が間違いなく学校の廊下であることを確認した。
それが済むと、辺りを警戒しながらも少しだけ前に歩いてみる。


「何故……?」
ポツリと呟く雲雀。
すると目の前に突然、何故かやけにはしゃいでいる骸が現れた。

「恭弥君!
今は真夏ですよね!?
夏といえばビーチ!
ビーチといえば水着!
…というわけで水着着てください!此処に用意してありますから」
「というわけってどういうわけ?
…別に僕は泳ぐつもりなんて無いし、このままでいるよ」
「クフンっ
つれない人ですね…」

雲雀は近くにあった ゆったりと座れる白い椅子。所謂ビーチチェアに腰掛け、チラリと海へ目を向ける。

「これ、君がやったの?
つまり、この部屋にある風景は全部…幻覚?」
「はい。
…なかなかいいとは思いませんか?」
「……まぁ、君にしてはいい考えなんじゃない?」
「でしょう?
…って、寝るんですか?
折角ビーチなんですから、風情あることの一つや二つ しましょうよっ!」

その言葉に雲雀は、ゆっくりと閉じかけていた瞼を止め、横目で骸を見る。

「風情あること?」
「はい」
「例えば?」
「………水をかけあうとか。」
「却下」
「……予想はしていましたけどね。」

「そんなことしたら水で濡れちゃうでしょ?
…ていうかそれって風情あることっ?
…スイカ割りとかならやってあげたのに」
「いえ…幻覚なので実際に濡れるわけでは…。
…スイカなんて買ってきてないですっ」
「それじゃあ代わりにナッポー割りとか。
あ、ナッポー役は勿論骸だよ!」
「………冗談でも止めてください。」

暫く一人突っ立っていた骸だったが、やがてしゃがみこみ地面の砂を集め山らしきものを作り始めた。

「…何してるの?」
暫くその様子を眺めていた雲雀が聞いた。

「城でも作ろうかと思いまして」
骸が砂を集める作業を続けながら答える。

…不意に骸が集めた砂の上へ水が垂らされる。
骸が顔を上げると、両手に水を入れた雲雀が傍に来ていた。

「水、無いと固まらないでしょ?」
「おや…一緒に作ってくれるんですか?」
「比較的濡れないで済みそうだからね」

骸は、再度水を掬いに海へ駆けていく雲雀を見やり
嬉し気に一度微笑むと、再び砂を集める作業へと戻った。



(それにしても、どうして幻覚なの?)
(普通の海岸だと人が多いでしょうからね。
群れるのは嫌いなんでしょう?)
(プライベートビーチくらい、僕なら簡単に手配できるんだけど)
(……僕が用意したかったんですっ!)



…Fin.

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