Is there love?
その場には、2人の人間がいた。
「はぁ…アンタさ、やることやってからしろよな。そういうの」
一人は17・8歳の少年。
「はっ、ヤることヤってっからシてんじゃねぇか。」
もう一人は24・5歳の男性。
この2人の関係はと言うと、
「てめっ、勝手にカタカナ変換してんじゃねぇよ!誰も性的行為をしろなんて言ってねぇがろうが!アンタまがいなりにも教師だろう!」
先生と生徒の関係である。
「俺は紛いもんじゃなく正真正銘の教師だ。」
「なら聖職者らしい格好と行動をしやがれこのホスト!」
少年は至って普通。耳にかからない程度の黒髪に、カッターシャツは第1ボタン以外はとめ、ネクタイも曲がりのないようしっかりとシめられ、それに加えて特に特徴の無い、言い換えれば何処にでも居そうな=平凡なヤツ、という出で立ちだ。
一方、教師の方はワインレッドのカッターシャツに黒の革パン、髪は金髪で耳・首・腕・腰には金や銀のアクセサリー、とどこぞのホストのような出で立ちでしかもそれが良く似合う男前で、万年発情期野郎だ。
平凡な少年はひょんなことからこの教師に目を付けられ、ことあるごとに教師のテリトリーである国語準備室に呼び出され資料を運ぶのや掃除を手伝わされているのだ。
「俺の後ろは清いままだから。」
「だからなんだって言うんだよっ!そんなことで聖職者は維持されんのか!?前でヤってんだから意味ねぇんだよ!」
「あ゙ぁ?良いじゃねぇか、後ろ清いだけでもよお?」
さて、今更ながら何故このような状況になっているのかについて説明しよう。
――少年は何時もながら呼び出しを受けていた。
それだけでも億劫なのにそれに加え、国語準備室へ行き躊躇いなく扉をあけるとそこには
女顔の可愛い"男"と呼び出した教師―勿論、"男"―が交わっている光景があったのだった。
「誰も図体のデカイしかもやけに強い奴のケツなんか狙やしねぇよ!寝言は死んでから言え!」
「それは安易に俺に死ねと言ってるのか?」
「良く分かってんじゃねぇか・・・。毎っ回毎っ回、オレを呼びつける度に情事をしてやがって、鳥肌が立つんだよ!気色悪い、今すぐ死ねよ。」
少年が言うように、この教師は少年が準備室へ来る前までセックスをしていた。
それも毎回、呼び出される度に。
「生きる。それはお前の来る時間が悪いんだ、俺は関係ねぇ。」
先ほどまで盛っていたソファーからデスクへ移動しふんぞり返る教師。
「関係大有りだこのクソボケ!俺はアンタから呼び出された後すぐに来てんだぞ!?そんな早くヤれるわけねぇだろうが!つーことは放送する前からシてやがったんだろ!」
「あぁ、放送中もシてたぜ。っとそれは置いといて、"すぐ"とはまた大胆な告白だな。そんなに俺のことが好きなのか。」
ニヤリとニヒルな笑いにどこか艶めいた色気を滲ませながら、教師は少年を見る。
「・・・てめぇ、いい加減にしろよ・・・都合の良い解釈しやがってっ。俺がアンタのことを好き、だあ?ハッ!笑わせんな。誰がお前のような変態を好きになんだよ。今すぐ消滅しやがれ。」
「無理だな。つか、そんなに照れんなよ。優しくしてやるから。」
「黙れ。今すぐそのさっきまでヤってた汚ねぇブツを踏み潰してやろうか。」
少年は手を前に出し、グッと拳を握る。
「それは勘弁だな。生憎俺はMじゃない。どっちかっつーとSだ。」
教師は事も無げに言う。
「誰もアンタの性癖なんて聞いてねぇ!・・・用事がないなら俺は帰らせてもらう。」
少年は後ろを向こうとしたがそれに重なり教師の言葉が飛ぶ。
「いや、用事ならある。俺とセッ「腐れ外道が!そんなことの為に呼び出すんじゃねぇよ!鳥肌通り越して吐き気がする!」
帰ろうとした少年は教師が言い終わる前に言葉を遮る。
「チッ、わーったよ。これを資料室に持って行け。」
観念したように教師はデスクに置いてあった5、6冊の厚いファイルを少年に手渡す。
「舌打ちすんなや。・・・これだけだな?」
受け取った少年はそれが見た目より重量があったため少し慌てた。が、この変態の前で醜態を晒すことは是が非でも避けたかったので、冷静になるため少し間をあけてから問う。
「あぁ。」
「次くだらねぇことで呼び出したら再起不能にしてやるからな。」
今までより少し低めの声で言うと後ろを向き歩き出す。
「・・・・・・」
教師は無言で少年を見やる。
だいぶ離れた後、教師は頭を掻きながら呟く。
「本気、なんだがな。・・・まっ、止めない俺が悪いんだ。その罰っつーことだな。」
目には未だ少年の後ろ姿が写っていた。
「いつか絶対に」
Is there love?
(あるある)
(あるわけないだろうが)
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