A lunch of death...ι
学園一の温室。そこはある2人のテリトリーだ。
「ねぇねぇ、これってなぁに〜?」
1人は見た目も口調もチャラく耳には幾つものピアスをつけた、抽象的な顔をした金髪の男。
「ん?あぁ、それは卵焼きだよ。」
もう1人は、何処にでも居そうな平凡な見た目だが、纏う雰囲気はほわほわした癒し系の茶髪の少年。(少年とは言っているが金髪の男とは同級である。)
「ふ〜ん。・・・あっじゃあ、これは〜?」
いつもは金髪のチャラ男が弁当を作り、温室でゆっくりと茶髪の平凡少年とランチタイムを楽しむのだが、昨日、少年が突然「明日は僕が弁当作るね!」と言い出し今に至っているのだ。
「それはミニハンバーグ。」
「じゃあ、これは〜?」
「それは唐揚げ。」
「そんじゃあこれ〜。」
金髪のチャラ男はまた別の物を指す。
「それはポテトサラダ。・・・・・・何で聞くだけ聞いて手をつけないの?」
少年は訝しげに男を見る。
「ん〜〜?んっとねぇ〜、オレが見た感じ、どれがなんなのか(全く)わからなかったんだ〜。
・・・・・・なんで全部黒いのぉ?」
間延びした喋り方で緩やかな雰囲気になるが、金髪のチャラ男の顔には少し引き吊った笑顔があった。
「ん?何言ってるの。それが普通でしょ?それに、多少焦げてても特に問題はないよ。」
そんな男の表情に気付くことなく、少年は至極当然のように言ってのけた。
「んー、それはそーなんだけどぉ、なんでご飯まで黒いのかな〜?って思ってぇ…」
『いやいや、異常だよ。』男はそんな言葉が出そうになるのを寸での所で押し留め、愛する少年を傷付けないようオブラートにオブラートを重ねて問う。
「ああ、それイカすみ。」
「へぇー、イカすみか〜。・・・・・・じゃあ、なんで蠢いてるの?」
「イカすみだからね。」
「んー・・・ん?」
ねぇそれどういう意味?
思わず語尾が延びなくなるくらい真剣に質問しそうになった男。しかし表情は(若干ひきつってはいるが)笑顔だ。
「、食べないの?」
少年は食べる気配のない男の様子を見て不安そうに眉をハの字にしうるうるとしためで見上げる。
「っ///・・・・・・・・・・・・・・・・・・た、食べ・・・る〜・・・。」
少年を溺愛している男はその少年の無意識な上目遣いに顔を赤らめた後、『泣き顔は見たくないから...』と意を決して口を開いた。
「ホント!?じゃあ、はい。あ〜ん」
その言葉を聞き、少年の顔が目に見えて明るく輝いた。
なにも男の方だけが一方的に好いているわけではない。
少年も男のことを好いている。
・・・それ故に、『あ〜ん』という突拍子のない行動に出るのだが。
「///あ〜…ん;」
男は恋人からの『あ〜ん』に嬉しさがある反面、眼前に突き出された黒い物体が近づく様に焦りと不安と戸惑いで心が渦巻いていた。
が、そんなことを悟らせるわけにはいかないと口を開け、黒い物体を食した。
「・・・・・・どう?」
少年は首を傾げて問う。
男はその姿を見て『可愛いなぁ』と思う
「・・・・・・っ・・・うん、・・・お、いしい、よ、ぉ〜・・・・・・・・・・・・倒れ、そうなくらいに」
余裕もなく、顔を真っ青にしてテーブルに突っ伏した。
「リクっ!」
少年は驚いて男の名前を呼びながら男の肩に手を乗せ揺する。
「・・・・・・」
勿論、この十数年間で1度も食べたことのない、そしてこれ以降食べることはないだろう(と願うような)味で口いっぱいにしながら気絶している男が答えるはずもなく、
「そんなに喜んでもらえてうれしいよ!フフっ、明日は何作ろっかな〜。リクが起きたら聞いてみよ〜!」
男は屍と化している。
何故そんな思考へ至ったのか分からない少年の誤解を解く者はいなかった。
男が起きた後、「明日からは俺が作るね〜。」と、弛い話し方とは反対に、目がやけに切羽詰まっていたのを不思議そうに見ていた少年はそのあと、「?じゃあ、お願い!」と落ち込むことなく笑顔で返した。
A lunch of death...ι
(三途の川が見えちゃった〜)
(お料理って楽しいなぁ)
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