雨の日からの日課
4
三人の女子高生が傘を差し、道に広がって歩いていた。
制服から、自分とは違う高校であることはすぐに分かった。恐らく近所の私立校の生徒だろう。
雨の中でも、キャハハハ、と大袈裟に笑う声が鮮明に聞こえてくる。
晴れの日だったらどんなに響いていることだろう。
彼女らは全くもって邪魔としか言いようがない。
避けることが出来ない。
あーあ、女子は苦手だ。
邪魔だって思ってるのはこっちなのに、逆にそう思われることが多いんだから。
そうブレーキをかけようと思ったが、思わぬことが起きた。
ブレーキが、効かない。
雨の所為だったのだろう、一時的なことであった。
思わぬ事態に、そのときの自分はパニック状態だったのだと思う。
ブレーキをもう一回かけるという選択肢が頭の中に浮かんでこなかったのだ。
でも、そのままだと本当にぶつかって問題になりかねない。
はっとしてもう一回ブレーキをかけたら、きちんと止まってくれた。
彼女らにぶつからずに済んだのは良いのだが、バランスを崩してしまいそのまま横倒れになった。
ガタンガタン、と音がした。
こんなに強い雨の中でもその音は響いていたのだろう。彼女らの声のように。
その三人の女子高生は振り向いた。
そして、俺を見下げながら、その甲高い声で笑った。
「あはは、馬鹿じゃね?」
そんな声が聞こえる。
俺自身、倒れている身なので、彼女らを見上げることしかできなかった。
見上げるのが自分なら、見下しているのは彼女らである。
だからだろうか、妙な威圧感に襲われたのは。
俺は一時唖然としていた。だが、すぐに倒れた身体と自転車を起こした。
相手に怪我が無かったとはいえ、これは自分の過失だった。それは認める。
けれども、その後の彼女らの反応は見るに堪えないものだった。
彼女らの行動が不愉快であることに変わりは無い。
彼女らは、甲高い笑い声をさせながら前へ進んだ。
俺は、立ち止まったまま進まなかった。進めなかった。
恥ずかしかった、と言えばそうだ。自分が馬鹿馬鹿しくなってきてしまったのだ。
雨は、そんなことに関係無く、この身を叩きつけるようにして降ってきた。
何故か、そのときは、それが心地良かった。
痛いのを嫌がっていた自分は、何処にも居なくなっていた気がした。
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