雨の日からの日課
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家から高校に行くまでに、とても傾斜のきつい坂がある。
とある大きな橋に繋がっている坂なのだが、これを自転車で上りきるのは正直辛い。だが、橋を渡りきったその後の下りは爽快だ。
ただ、スピードを出しすぎると危険で、稀に横転することもある。
雨の日なんて、特に気を付けるべきである。
入学当初は半分も行かないところで息が乱れていた。
だが、最近は、あんなに疲れていたのが嘘のように、余裕を持って登校できるようになった。
未だに、あの坂道を上るのは大変だけど。
今日の空は晴れていた。けれど、雲一つ無いという表現はそぐわない。
真っ青な空の上にうっすらと白いベールのようなものが見える。
満遍なく白が広がっているので、雲という塊があるのに気が付かなかった。
視線を向こう側の歩道へ移す。
本当は今の速さよりも、もっと速く進むことができる。
何時も少しゆっくりこいでいるのだ。
本気を出せば、高校までもっと速く行けるけれど、俺は別に速く登校しようと思っているわけでない。
俺はある雨の日から、『あの人』を探しながらペダルを踏んでいる。
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