Love Boys
やきもち 2 〈夏目〉
真剣な、そしてどことなく寂しげな顔つきで田沼に訊いてきた。夏目の言葉に田沼は驚き、急いで「違う、そんなんじゃ・・・。」首を横に振りまた、俯いてしまった。
「じゃあ、どうしたんだ?」
静かにこの部屋の戸を閉め、田沼に少しずつ近づく。「な、んでも、ない・・・。」途切れながら答えている内に、夏目は田沼のすぐ目の前に来ていた。それに気付いた田沼は少しだけ身体をビクつかせる。
「なんでもないわけないだろ!」
夏目が言いながら、田沼の両頬を掴み無理矢理顔を上げさせた。その行動に田沼は驚き、目を見開いた。
「理由無しで、泣くやつなんかいないだろ・・・。」
そして、未だに流れ出ている涙を夏目は親指で拭い取った。また、田沼はまだ涙を流していたことに気付いていなかったため、
(まだ、泣いて・・・。)
泣いていることに対しても心の中で少し驚いていた。
「で、なんで、泣いているんだ?」
ゆっくりとまた同じ事を繰り返し聞いてきた。
「・・・本当に、なんでも」
「なくないだろ。・・・俺に、言えないことなのか?」
田沼の言葉を遮り、そう言った。
「・・・。」
じっと見つめられながらも何も言わない田沼に
「無理強いはしないから、言いたくないならいいよ。」
優しく微笑み、手を離して部屋を出て行こうと田沼に背を向けた。「夏目・・・っ」歩こうとする夏目の服の裾を掴み、行動を制止した。
「田沼?」
「あの子に・・・っ!」
自分の胸元をもう片方の手で強く掴みながら続けた。
「やき、もちを・・・焼いていたんだ・・・。」
情けない顔だと自分でも分かっている田沼だが、それを隠せるほどの余裕がない。
「あの子、って・・・仔狐のことか・・・?」
小さく頷き、下を向いたままで服の裾を掴んでいた手を離してそのまま、床に力なく座った。
「仔狐は優しくていい子だし、何も悪くないんだ・・・何も・・・。」
(俺は、ただ単に自分が・・・優しい、いい子な仔狐にやきもちやいている自分が・・・。)
「自分が情けなくて・・・。」
静かに涙を流す。床に雫がポタと一粒落ちる。
「それで、泣いてたのか・・・。」
訊くっていうわけではなく、それは確定するような口調で言った。それに答えて、田沼は小さく頷く。
「・・・ごめん。夏目・・・。」
小さく呟く田沼を夏目はそっと抱きしめた。安心したのか田沼は涙を流し、夏目にしがみ付きながら、
「仔狐は悪いやつじゃないのに・・優しくて・・・でも、」
喋り続けた。
夏目はそれを静かに聞き、田沼が泣き止むまでずっと抱きしめていた。
作者:凛祢
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