Love Boys †〇不安すぎて怖い夜〇† 〔No.6〕 ※ネズ紫です。 「ネズミ・・・。」 ベッドに蹲りながら紫苑は呟いた。 いつもならばこの時間帯には部屋にいるネズミの姿が今此処にはない。外へと出かけたまま戻ってこないのだ。 紫苑は溜め息を吐いた。もう何回目か分からないほど知らぬ間に溜め息を吐いていた。 (ネズミのことだし、心配は要らないと思うけど・・・。) それでも心配してしまうのは人情ってものだ。そしてまた紫苑は溜め息を吐く。 どのくらい溜め息を吐いたのだろう。 そんなことを思いながらベッドに顔を押し付ける。 (探しに行ったりでもしたら、怒られるかな・・・。) 探しに行こうか行くまいか。悩んでいると、ドアを叩く音が聞こえた。 ネズミ? 勢い良く起き上がった紫苑に近くにいた小ネズミ達が驚き、どこかに隠れて行った。そんな小ネズミ達に「ごめんっ」と謝りながら玄関の方へと急いで向かって行った。急いで行った玄関先にいたのは、イヌカシとイヌカシにもたれかかって腹部を押さえているネズミだった。ネズミのその押さえている腹部から流れ出ていたのは真っ赤な血だった・・・。 「ネズミ!?どうしたの・・・っ!?」 ネズミの方に急いで駆け寄る紫苑。気を失っているらしく、ネズミからの応答はなかった。 「ねぇイヌカシ。ネズミ、どうしたの?」 少しばかり潤っている瞳をイヌカシの方に向け訊くと、 「知らないよ、通りがけに拾ったんだから。本当は放って置こうかとも思ったけど・・・これは特別さ。」 ふぅ、と溜め息を吐きながら空いている片方の手で自分の前髪をいじくっている。その先から雫が垂れる。 あれ?とよく見てみると、雨にでも降られたのだろうか二人は濡れていた。イヌカシがクシャミをする。 「じゃあ、後はお前さんに頼んだよ。」 ネズミを床に置き、そのままひらひらと手を振って部屋から出ようとしているイヌカシを見た紫苑は「ぁ、イヌカシちょっと待って・・・っ!」と言って止めた。 「何?」 首だけを紫苑の方に向けてから訊く。 「まだ雨降ってるんだろ?どうせなら雨が止むまで此処にいたらどう?」 「お前さんはお人よしだね。そんなんじゃここで生きて・・・。」 イヌカシは途中で言葉を呑んだ。紫苑が服の裾を掴んできたからだ。 その手は、震えていた。 (・・・。) 一つ溜め息を吐くと、「分かった。」と一言言って、中に入る。 きっと紫苑の心境を感じ取ったのだろう。紫苑は不安すぎて怖いのだ。 ネズミが死んでしまうのかということが。 (俺も、とんだお人よしになったもんだな・・・。) また一つ、溜め息を吐きながら心の中でそう呟いた。 ネズミはベッドの上で静かな寝息を立てている。 紫苑は部屋にあったものでネズミの傷を辛うじて処置した。胸を撫で下ろし、紫苑に安堵の溜め息が漏れた。 (よかった・・・。) まだ震えている自分の手を必死に押さえながら思う。 イヌカシも知らぬ間に自分の手が汗だくになっていることに気がついた。その手を紫苑から渡してもらったタオルで拭く。 「ネズミ・・・。」 震える声でネズミの名前を呼ぶ。その声から安心していることが分かる。 小ネズミ達がネズミの周りをウロチョロと動き回っていた。 「・・ぁ」 ふいに、イヌカシが小さく声を上げた。 「どうした?イヌカシ。」 紫苑が訊くと「雨・・・。」とイヌカシは呟いた。 「あぁ・・・。」 よく耳を澄ましてみると雨の音が消えていた。 聞こえるのはポツ、ポツ、と雫の落ちる小さな音だった。 「じゃあ、俺は帰るよ。」 タオルを紫苑に投げて渡し、紫苑はそれを慌てて受け取る。「あぁ。」と紫苑は笑顔になり 「イヌカシ、ありがとう。」 優しそうな顔をイヌカシに向けて言った。 イヌカシは少し顔を歪めて見せたが、ひとつ溜め息を吐き片手をヒラヒラさせて、部屋を出て行った。・・・遠くから、ドアの閉まる音がする。 部屋の中は静まり返る。そこから小さくクスッと小さく笑う声が聞こえてきた。勿論それは紫苑のものだ。紫苑の下から チッチッチ・・・ 小ねずみの鳴き声が聞こえる。 小ねずみを優しく撫で、ネズミの眠るベッドにうつ伏せになってそのまま眠りへと落ちていった・・・。 それから何時間経ったのかは分からない。 紫苑はゴホッと咳をする音で、起きた。 「ネズミ?どうした?」 寝起きである紫苑の視界はぼやけてよく見えない。目を擦りながらよくネズミを見てみると、傷口のあった腹部を押さえ、横になっていた。 「ネズミ?!」 紫苑の反対側に横になっているので、ネズミの顔を覗き込むために腰を少し上げた。 顔を覗き込んで紫苑は言葉を失った。それはネズミの口から血が出ており、腹部からはまた真っ赤な血が出ていたのだ。 「なんで・・・。」 ちゃんと傷の処置をしたはず・・・。そう考えていると、玄関の方からガタッと物音がした。音に気がついた紫苑は急いで玄関の方に行ったが、其処には誰もいなかった。唯一おかしなことは紫苑もネズミもいじっていないはずの玄関のドアが開いていたことだった。 (イヌカシは確かにドアは閉めて行った・・・音もしてたし・・・。) その場で紫苑は一人愕然とした。 ネズミは勿論、紫苑はいじっていない。イヌカシもちゃんと閉めて行った。とすれば、誰かが此処に侵入し、ネズミにまた危害を加えた。そう考えるしか、なかった。 フラフラと覚束ない足取りでベッドの方へ移動する。ベッドの近くまで来た紫苑は力なく膝を床に落とし、呆けた。 「僕、は・・・。」 頬に生暖かいモノが流れ出る。 僕は・・・僕の、せいでネズミは・・・。 相手の気配に、気付かなかったから・・・。 自分を責め続ける紫苑は次々と流れ出てくる涙を拭おうともせずに、ただネズミを見つめた。 ネズミ、ゴメン・・・ ネズミ、あんたは死ぬのか・・・? ネズミ・・・ 僕、僕は・・・ そこで小ねずみが紫苑の背中や腕を駆け上った。紫苑は我に返り、今すべきことを考える。 「そうだ、呆けている場合じゃない・・・。」 処置を・・・傷の処置をしなければ・・・と此処にある全てのものを使ってネズミの傷の処置をしていった。 汗だくになった額をタオルで拭き取る。 今回二度目の安堵の溜め息を吐いた。ネズミの呼吸は安定したものになっている。 良かったと小さく呟いた。そこでどっと疲労からきたものなのか睡魔が襲ってきた。また目をつぶりそうになる。しかし、紫苑は寝ようとはしなかった。 また、自分が寝ている間にネズミを襲ってきたりしないか、不安だったからだ。 不安で、不安で・・。 不安すぎて。 怖かったから・・・・・。 (今夜は寝ない。) 決意した紫苑は近くにある椅子の座り、じっとネズミを見つめた。 それから、時間が刻々と過ぎていった。 「紫苑・・・。」 今までずっと起きていた紫苑。ネズミは薄く眼を開けて紫苑を見、名前を呼んだ。 「ネズミっ。」 急いでベッドの方へと駆け寄る。 「いつまで、起きてるんだ。」 「ずっと、朝まで・・。」 「阿呆か。寝ろ。」 「ヤダ。」 「寝ろ。」 「ヤダ。」 寝ろ、と言うネズミに紫苑は首を縦に振ろうとはせず、ずっと横に振っていた。 何回か続けた後に、ネズミは呆れたように溜め息を吐いた。 「駄々をこねるな、紫苑。お前は餓鬼か。」 「・・・そうだ、僕は子供だよ。だから・・・。」 紫苑の頬にまた涙が流れ出てきた。 だから、君はもっと酷い怪我を、しているんじゃないか・・・。 そう、心の中で呟いた。 「・・・紫苑。」 自分の手を紫苑の頬に当てて、涙を拭う。傷が痛むのか少し顔を歪ませながら。 「寝ろ。この傷はお前のせいじゃない。俺の不注意だ。だから・・・。」 「違う。違う・・・っ。だって僕が相手に気が付かなかったから、傷が・・・酷く・・・。」 「紫苑、そうやって自分を責め続けるな。」 「だから、今度は気付くように、僕は・・・。」 まるでネズミの言葉が届いていないように紫苑はそのまま続ける。 「紫苑。」 そんな紫苑にネズミは優しく名前を呼び、伸ばしていた手を頭に移してベッドの方に引きつけた。 「いいから、寝るんだ。紫苑。」 そう言うと、ネズミは全身の力を抜くように静かに眠った。しかし、紫苑の頭にのせた手は決して離そうとせずにいた。紫苑はまだ流れ出てくる涙を拭わずに、ネズミの静かな寝息を聞きながら眠りについた・・・。 あとがきならぬ言い訳処 あーっと まず初めにごめんなさい・・・。 上手くかけなかった>_< すんまそん・・・。 とにかくごめんなさいでございまするっ!! 時間がなかったんですよ。ハィ。 思いっきりの言い訳になりますが・・・っ 作者:凛祢 [次へ#] [戻る] |