お題小説
六
「こんな時に誰だよ。―――――はい」
足を止めることなく、奏多は電話に出た。
相手は後輩であった。
先輩、と叫ぶように呼ばれた。相手はかなり慌てているようだった。
どうした、と尋ねる前に衝撃の真実が耳の奥へと響いた。
―――琉希先輩が車にはねられて.....今さっき亡くなりましたと。
いつの間にか奏多の足は止まっていた。瞳はどこも映してはおらず、携帯電話を片手に立ち尽くしていた。
「なんで.....」
「あーあ、だから言ったでしょー? 運命は『変わらない』ってさー」
再び天使が現れた。
もう驚くことはない。これは現実なのだから。
「言ってない」
「あれ、そうだっけ? でも君は『後悔しない』って答えたし。ちょっとはあの子の命が延びて良かったねー」
「.....最低」
「それは君。君は友人を2度殺したことになるからね。それに僕だけが悪いとか思うなよ」
今までの口調とは打って変わって、声が低く厳しいものとなる。
何も言わない奏多に天使は近づいて、意地悪そうに耳元で囁いた。
―――輪を乱す願いは叶えてはならない
人の運命を変える願いを叶えるのは最大の禁忌、と。
哄笑と共に天使―――堕天使は消えていった。
「ごめんっ...。ごめんな、琉希っ!」
ただ、ただ奏多は謝り続け、静かに涙を流した。
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