お題小説
四
「叶えてあげようかー?」
「は?」
奏多の目の前に現れたのは、1人の―――天使であった。
パーマのかかった、栗色のショートヘアに、大きな蒼い瞳。白いワンピースを着ていて、背には服よりも純白の翼。
「だから、君のネガイ。叶えてあげようか?」
奏多は天使を見つめ、かたまった。
果たして信じていいのだろうか。それ以前に、今起きていることが現(うつつ)か夢か分からなかった。
先ほどの事故のせいで、頭がおかしくなってしまったのかもしれない。
「疑ってるでしょ? まぁ、それなら別に叶えなくてもいいんだけどねー」
ちらり、と天使は奏多を見やる。
「っ...。それは、琉希を生き返らせることができる、ってことだよな?」
「うーん、できることはできるよー。後悔しない?」
「もちろんだ」
琉希が生き返るというのに、なぜ後悔する必要があるのか、と奏多は疑問に思った。しかし、深くは考えなかった。
今、奏多の頭の中は『琉希』のことしか考えられなかったのだ。
「それじゃあ、自分の言葉には責任もってねー」
そう言い残し、天使は光と共に去っていった。
その光は、あまりにも眩く、目が開けていられないほどだった。
「―――、...なた、奏多!」
「ぇ、...あ?」
目を開けてみると、琉希の顔があった。事故の跡などは辺りにはない。
「お前、大丈夫か?」
どこにも怪我をしていないか確認する。
「な、何だよ、いきなり。ボーっとしてた次は慌ててさ」
奏多は先ほどの非現実的な出来事を思い出していた。
あれは、本当に起きたことなのか。事故も、天使も夢だったのではないか。
「いや、何でもない。立ったまま夢、見てたみたいだ」
なんだそれ、と琉希は笑いながら奏多の肩を小突いた。
あれは夢だ、と奏多は自分に何度も言い聞かせた。そして、忘れてしまおう、と。
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