お題小説
ごお
「あのな。お前―――衣穂菜を好きなのは俺だけでいいんだよ」
と、夜に腕を引っ張られ、抱きしめられる形になった。
つい、と目線を上げれば、夜と視線がぶつかった。
「あ、あの...夜?
―――んっ、」
夜の顔が近づいてくる、と思った頃には、唇が塞がれていた。そして、後から感じたチョコの甘さ。
「こうすれば、アイツが作るデザートより絶対にうまいだろ?」
抱きしめられたまま、至近距離で訊かれる。
しかし、こんなことをされたのは初めてで、言葉が出てこなかった。
「主、完成シタ! ...ん? 主、顔が赤イ。熱でもあるのカ?」
両手においしそうなデザートを持ちながら、虎斗が尋ねてくる。
まだ夜に抱きしめられたままだったので、彼を突き飛ばすようにして離れた。
「ううん、大丈夫だよ。それより、早く食べたいな。虎斗の手作りデザート」
突き飛ばされた夜は、少し離れた所で小さく、呻いていた。どうやら、機械に頭をぶつけたらしい。
「うん。すごくおいしいよ、虎斗!」
「本当カ? 主に喜んでもらえて嬉シイ!」
それから何日か、衣穂菜は夜の顔をまともに見ることができなかった。
そのため、夜がどんな瞳で衣穂菜を見ていたか、彼女自身知らなかった。
Fin.
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