[携帯モード] [URL送信]

お題小説
ごお

「あのな。お前―――衣穂菜を好きなのは俺だけでいいんだよ」

と、夜に腕を引っ張られ、抱きしめられる形になった。

つい、と目線を上げれば、夜と視線がぶつかった。

「あ、あの...夜?





―――んっ、」


夜の顔が近づいてくる、と思った頃には、唇が塞がれていた。そして、後から感じたチョコの甘さ。

「こうすれば、アイツが作るデザートより絶対にうまいだろ?」
抱きしめられたまま、至近距離で訊かれる。

しかし、こんなことをされたのは初めてで、言葉が出てこなかった。

「主、完成シタ! ...ん? 主、顔が赤イ。熱でもあるのカ?」
両手においしそうなデザートを持ちながら、虎斗が尋ねてくる。

まだ夜に抱きしめられたままだったので、彼を突き飛ばすようにして離れた。

「ううん、大丈夫だよ。それより、早く食べたいな。虎斗の手作りデザート」

突き飛ばされた夜は、少し離れた所で小さく、呻いていた。どうやら、機械に頭をぶつけたらしい。

「うん。すごくおいしいよ、虎斗!」
「本当カ? 主に喜んでもらえて嬉シイ!」








それから何日か、衣穂菜は夜の顔をまともに見ることができなかった。





そのため、夜がどんな瞳で衣穂菜を見ていたか、彼女自身知らなかった。

           Fin.


[←][→]

7/9ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!