お題小説
よん
「えーと、3日」
「ぶっ倒れるぞ」
「大丈夫。今は嬉しくて、眠気はなくなったから。でも、疲れてるから、甘いものが食べたいかな」
と、虎斗の方を見ながら言えば1つ頷き、床に降り立った。
「分かっタ。主のためナラ! 主、ちょこはあるカ?」
チョコのデザートを作ってくれるようだ。料理は全般、お菓子からフルコースまで作れるようプログラミングしてある。しかし、何を作るかはロボットの意志に任せてあるのだ。
「チョコは、あそこの冷蔵庫に入ってるよ。キッチンはその奥ね」
地下室の隅、多くの機械がある研究室の一角にポツン、と1つ白い冷蔵庫が立っている。
地下室とはいえ、食事はできるようになっている。
「主のため、主のタメ〜♪」
自作の曲を歌いながら、虎斗は準備を始めていく。
「たっく、チョコぐらいそのまま食べればいいだろ?」
「デザートが食べたい気分だからさ」
「そうか。てか、あのトラ。『主』大好きだぜ?」
「いいの。ロボットはそういうものでしょ?」
ロボットは主人に従順でなければならない。それが大前提である。
今回は試作品なので、自分が『主』である。もちろん、情報を書き換えれば、夜に従順にすることもできるのだ。
―――しかし、そうする気は更々ない。
「小谷家の虎は1匹で充分だ」
ため息を吐きながら、夜は言った。
「だーめ。泰牙はペットだし、働いてくれないからね」
小谷家の庭には、本物の虎がいる。名は泰牙。赤ちゃんの頃から育てた、ホワイトタイガーである。人慣れしていて、噛みつくことはない。
1日をほぼ睡眠に費やす、怠け虎である。
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