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十六夜月の秘密


「不思議な奴だ。毎日、何不自由なく暮らしているのに。いくら平和とはいえ、街には食も家もない奴はいっぱいいるんだぞ」

「.....」
「ま、他人は関係ない、と?」

「そんなことっ...」

ない、とは断言できなかった。
自分のことばかりで、他人のことは考えていなかった。先ほどの言動は彼らに失礼なことだったのだろう。

「別にいいさ、気にするな。どうせ、死ぬんだから」

カイルは目の前の刺客―――クロを見つめる。

本当に殺したいのならば、さっさと殺せばいいものを。なぜ、ここまでこだわるのだろうか。

全く、相手が何を考えているのか分からなかった。

「これから毎日、来る」
「.....え?」

クロが何と言ったか理解するのに、暫し時間がかかった。

「毎夜、ここにいろよ」

分かった、と返事をする前に、クロは部屋から消えた。



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