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十六夜月の秘密


しかし、その言葉を聞いても、王子は抵抗などしなかった。ただ、相手を見つめているだけであった。

「おい、死ぬんだぞ? いいのか?」

王子はまだ動かない。

暫し(しばし)見つめ合っていた2人。
次に行動を起こしたのは影の方であった。

王子の上から退き、手にあった短刀をしまった。

「...殺さないのか?」
床に寝転んだまま、王子は尋ねる。

先ほどまで、殺される気だったため、今の心境は変な感じだ。

「気がのらないからな」
素っ気なく影は答えた。

「ねぇ、刺客さん。名前は?」
「きいてどうする?」
「別に。気になったから」

「...―――クロ」
しぶしぶ、と影―――クロは答えた。

クロは全身真っ黒。髪も瞳も服もだ。すらりとした体型、肩まである髪、目元にはマスクを付けていて、素顔は分からない。
黒いマントが、よく闇にとけていた。



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あきゅろす。
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