十六夜月の秘密
2
しかし、その言葉を聞いても、王子は抵抗などしなかった。ただ、相手を見つめているだけであった。
「おい、死ぬんだぞ? いいのか?」
王子はまだ動かない。
暫し(しばし)見つめ合っていた2人。
次に行動を起こしたのは影の方であった。
王子の上から退き、手にあった短刀をしまった。
「...殺さないのか?」
床に寝転んだまま、王子は尋ねる。
先ほどまで、殺される気だったため、今の心境は変な感じだ。
「気がのらないからな」
素っ気なく影は答えた。
「ねぇ、刺客さん。名前は?」
「きいてどうする?」
「別に。気になったから」
「...―――クロ」
しぶしぶ、と影―――クロは答えた。
クロは全身真っ黒。髪も瞳も服もだ。すらりとした体型、肩まである髪、目元にはマスクを付けていて、素顔は分からない。
黒いマントが、よく闇にとけていた。
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