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十六夜月の秘密


言われてみれば、そうである。

クロは1人称を1度も口にしていない。『あたし』とも『オレ』とも。


「勘違いしたのは、カイル」
「う...そうだね」



それから、しばらく沈黙が続いた。何を話していいのか分からず、カイルはずっと黙っていた。

クロの方も、ただ飲み物に口をつけるだけで、話し始めるような雰囲気ではなかった。


意を決し、カイルが口を開けようとしたところ―――。


「そうだ! あたしのこと、思い出した?」

急にクロは目を合わせてきた。


「えーと...ごめん」
「そっか。これだけ姿をみせても分からないかぁ。あ、あたしが綺麗に育ちすぎたとか?」

アハハ、ありえない、とクロは笑った。


「クロは綺麗だよ?」

カイルは思ったことをそのまま口にした。


「は...? 何言ってんの! ありえないから」
「え、本当にそう思っ...」
「うるさい! 真顔でそんなこと言わないでよ」

見事にクロのは耳まで真っ赤に染まっていた。


率直に言ったが、気に障るようなことだったのだろうか。



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あきゅろす。
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