十六夜月の秘密
2
「あ。こっち、こっち」
「えっと...。こんにちは。クロの知り合いですか?」
と、女は名乗ることもせず、カイルを見つめた。
「敬語なんて...。
ほら、わかんないかなぁ」
「.....?」
「ひどいなぁ。よく見て。
―――あたしがクロだよ」
ぴた、とカイルの動きが止まる。
「え、えぇ!? クロって、あの『殺し屋』のクロ?」
「しー、声が大きいってば」
大声を出したカイルの口をクロは手で覆った。
「う、ごめん。
それより本当にクロ? 男だと思ってた...。喋り方も全然違うし」
「なんか、あたし。朝のカオと夜のカオがあるみたい。昔、そう言われてさ」
クロは微笑し、すでに注目していた飲み物に口をつけた。
確かに、昼と夜のクロではかなり印象が違う。笑い方が全く違うのだ。
「だから、男言葉を?」
「いや。本当はバラしても良かったんだけど、カイルをからかうのが面白くってね」
「ひどっ」
「でも、あたし。『男』だなんて1言も言ってないし、1人称だって使ってなかったでしょ?」
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