十六夜月の秘密
1
カイルは数年ぶりに城下へ来ていた。
クロに薬を飲まされて、次に起きた時には、夜が明けていた。
昨夜は床に倒れたはずが、ちゃんとベッドの上に寝ていた。きっと、クロが運んでくれたのだろう。
枕元にはクロからの手紙と地図が置いてあった。
手紙の内容は、城を出るときは絶対にバレないようにしろ、といったものだった。
その指示通り、カイルは気分が悪い、と人払いをして、部屋に侍従を近づけさせないようにしてきた。
しかし、部屋にいないことがバレるのは時間の問題であった。
1番、鋭いのは―――――、
「テンだよなぁ...」
せめて大事にはならないことを祈っているのだ。
そんなことを考えているうちに指定された場所にやって来た。
中に入ると、人はまばらで、それほど混んではいなかった。
カイルはクロを探そうと、キョロキョロと辺りを見回した。
今は姿がバレないよう、フードを被っていて、視界が悪い。
「あ。こっち、こっち」
と、奥の方で手を振る女の姿があった。
手招きをされたので、カイルは歩み寄っていった。
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!