十六夜月の秘密
5
いや、正確には窓から外へと飛び出したのだ。
「ここっ...、」
急いで窓に駆け寄り、下をのぞく。
高さはかなりある。普通に飛び降りては、死は免れないだろう。
しかしクロは、綺麗に着地すると、そのまま闇の中へ消えてしまった。
走り出せた、ということは怪我はなかったようだ。
「良かった...」
そう呟いて、はた、と気づく。
なぜ命を狙われている、こちらが安心するのか。
普通ならば、ここで待てと言われたからといって、待つ必要はない。
「でも」
しかし、クロに対しては、なぜか恐怖心などは現れてこなかった。
―――だからだろう。
「明日が楽しみだ」
そう思うのであった。
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