OGRE お前...誰だ? 「なっ...」 チーナは一旦、萩から離れる。そして、冷気の風を思い切り噴出した。 萩は簡単にそれを避けてしまう。さっきまで何もできずに、座りこんでいたのに。 チーナは確信した。 アレは萩ではない、と。 萩は顔を上げ、チーナを見つめる。 瞳はぞっとするほど冷たい。血が通っていないようだ。 「萩。ヤッパリ、オ前ハダメダナ。魔力ノ使イ方ガ下手ダ」 そいつは1人で喋っている。 自分の体の動き具合を確かめているのだろうか。手を何度も見ては、動かしている。 「お前...誰だ?」 恐る恐る、疑問を投げかける。 その質問待ってました、というように相手はゆっくりと楽しそうに答えた。 「私ハ萩デスヨ? ちーなサン」 そいつは、にこぉ、と笑った。 ―――ゾクッ。 全身に鳥肌が立つ。 そして体が震え始める。 今までに勝負において震える、ということは1度もなかった。ここにおいて、生命の危機が迫っているのを感じる。 ただの思い過ごしかもしれない、と思ってもなかなか震えはおさまらない。 アレは誰なのか。 萩の体であるのに、中身が違う。 明らかに声が、表情が違うのだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |