OGRE
互角は不安なんだ...
「優しいな、萩ちゃん―――いや、雷鬼は」
萩と藍次は、先ほどいた場所から少し離れたところへと移動していた。
チーナたちが戦っている姿は見えないが、わずかにそれの音は聞こえてくる。
「無駄に殺したくないし」
それは正直な気持ちだった。確かに彼らも陰陽師だが、そこまで力は強くないだろう。
ただ『三崎』に従っているだけなのだ。彼らは悪くない。
殺すのは、1人で十分だ。
「文献に書かれていたものとは違う...」
藍次は首を軽く傾(かし)げて、萩を見つめる。
口調はかなり落ち着いていた。
萩は突然そんなことを言われ、意味が分からないようで頭に疑問符を浮かべた。
「――冷徹、残酷。前の方がそっくりだ。まぁ大分、雰囲気も変わったようだけど」
「雷鬼がいつも同じものとは限らないでしょ」
その文献は間違ってる。
そう言いたかった。
確かに雷鬼は冷たいところがあるが、中身は優しかった。長の立場にあるからこそ、厳しくいなければならなかったのだと思う。
冷徹な存在だったら、あんな禁忌は犯さなかったはずだ。優しいからこそ、力を分け与えてしまったのだろう。
萩は早速、戦闘態勢に入った。
「陰陽師の当主である俺を倒すとでも?」
その言葉にしっかり頷く。
彼を倒さなければ、この戦いは一生終わらないのだ。きっと頭(かしら)をなくした陰陽師側は復活することはないだろう。
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