お祝い夢小説
くじらのうえでかくれんぼ 2

「おーい、イチカ−」

迷い猫を探すかのごとく名前を呼びながら船内をうろうろする。

あいつが特に懐いているマルコの部屋や親父の部屋、ナースたちがたむろしている部屋にも行ってみたが
誰に聞いても答えは「知らない」だった。

でも俺にはわかってる。

あいつら本当はイチカがどこに居るか知ってんだ。

マルコは見事に冷静を装っているようだったが手元のペンをインク瓶に必要以上に浸していたし

ナースたちは意味深に色気まじりの笑みを添えてきた。

親父はいつもみたいにグラグラ笑って「知らねェ」と言ってきたからわからなかったが。


こうなったら本気でかくれんぼだと意気込んで、俺は船内をくまなく探し始めた。

用具入れの棚の中

海図室の机の下

部下の部屋のベッドの下


そりゃあもう本当に飼い猫を探してる飼い主のごとくだ。

そんな俺の様子を見ているクルーたちが微笑ましい目で見てくるのが非常に俺をいらつかせた。

畜生。みんなどこに居るのか知ってんのか。


「あと探してないところは・・・食堂か。」


呟いた瞬間に、周りの奴らの表情が凍る。

バカ正直な奴らめ。
明らかにビンゴじゃねーか。

くるりと踵を返して食堂へ向かおうとしたら、俺の前に1番隊の奴らが5人並んで立ちはだかった。


「エースさん、ちょっと俺らと戦闘の練習付き合ってくれませんか?

最近実践がなくて体なまっちゃいそうなんで。」


言いながら詰め寄ってくるこいつらは
どうやら俺を足止めしたいらしい。

いい加減この進路妨害にも嫌気がさしてきた俺は、感情を抑えるまでもなく眉間に皺を寄せながら口角を持ち上げた。


「ほぉ・・・いい度胸だてめェら。

全員まとめて相手してやる。」


エースの気迫に押されながらも、1番隊のメンツも潰せないのがその5人。

「ひ、ひるむな!かかれぇ!!」


「火拳!!!」


いくら大きな船とはいえ、船内の廊下ならば広さはそれほど大きくはない。

あたり一面焼け焦げた通路に残ったのは

1番隊の5人ととばっちりを受けた船員の痛々しい姿だった。




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