お祝い夢小説
くじらのうえでかくれんぼ 3

「どいつもこいつも邪魔しやがって・・・」

食堂までの道のりで、俺に挑んできたやつの数は10人以上。

そいつらを全員黒焦げにして廊下へ転がしてきたから
船内は至る所が煤だらけだ。


あとで親父に叱られんなぁと心の中で毒づきながら最後の角を曲がると、
食堂の前に人だかりが見えた。


「エ、エースさん!!」

群衆の中にいた一人があげた声に
その場に居た全員が振り向く。


「おめェら燃やされたくなかったらそこどけ。」

人差し指の先を赤く燃やしながらくるくる回して見せると
扉の前の群衆は全員そろって一歩退いた。


「か、勘弁してくださいよエースさん!」

「イチカちゃんまだかぁ〜!?」


涙目であたふたしているクルーたちの様子からすると、この中にイチカが居るのは間違い無さそうだ。


必死の(とはいえ怯えながらの)抵抗を気迫で蹴散らして
容易にドアの前へたどり着く。


「イチカー居るかー?」


言いながらドアを押し開けた

その時――




「お誕生日おめでとうっ!!」




目の前にイチカが現れたかと思った瞬間に視界は真っ黒になって

思いっきり頭に抱き着かれていると気付く。


「うぉ、イチカ離せ、くるし・・・」

「ぅわごめん!」


慌てて離れたイチカを床へ降ろすと、その頬には白いクリームがぺっとりくっついていた。


「これ・・・どうした?」

指でぬぐって目の前に持っていけば、イチカはあからさまに「しまった」という顔をした。


「あ、あのね・・・今日エースの誕生日だから・・・朝から早起きしてケーキ作ってたんだけど・・・」

おずおずと後ろのテーブルから持ち上げた皿の上には、少し不格好なホールケーキ。


それを見た外の奴らが、歓声を上げた。



「イチカちゃん間に合ったかー!!」

「よくやったー!」

「エースさんおめでとうー!!」



そういうことか

こいつがケーキ作ってんのを俺に見せないように全員で阻止してたって訳だ。

普段ツンツンしてるイチカの意外に可愛いところを見せられたらさっきまでのイライラはどっかへ行って、

俺は焼き払った部下たちに心で「悪ィ」と謝った。


「サンキュー、イチカ。」


そう言いながら軽く屈んで
先程までクリームのついていた頬にキスすれば、
イチカは黙って顔を赤くした。


「よし、じゃあ行くか。」

「え、どこに!?」


腕を引っ張って歩き出した俺にイチカは疑問符を浮かべてる。


「俺の部屋。」

「えぇ!?ケーキ食べてよ!!」


抵抗しようとイチカがもがくもんだから、俺は掴んだ腕をさらに自分へと引き寄せた。


「デザートは後にとっとくんだよ」


そして彼女の耳元に唇を寄せて言う




「今はイチカが食いてェ。」




真っ赤になったイチカを有無を言わさず抱き上げて
茶化す奴らの間を抜けた。




甘いケーキで祝う前に

甘すぎる時間を過ごそう



今年も来年もそのつぎも


俺はきっとお前の側に居るから








[前へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!