番外編 B 「かあさんととうさん、いえをでてった」 男の子はそう言うと、ギュッと拳を握る。 それを見ていた子供は、男の子の手に自分の手を乗せていた。 「だいじょーぶ! いっしょにすもぉ? ね、ママいいでしょッ?」 にぱぁと笑った子供はそう言うと、女の人に尋ねる。 「そうねぇ…ママは良いけど…取り敢えず、お家に帰りましょうか? 移るとしても荷物が必要でしょう?」 女の人の提案に、子供も頷いた。 「僕、お名前は?」 「…いいづか しょう」 「そう…翔くんね。 良い名前ね。 私は一ノ瀬 夜兎(イチノセ ヤト) ママって呼んでも良いわよ?」 にこにこと隣で笑顔を浮かべている子の笑顔は、うふふと綺麗に笑うこの女の人に似たんだなと思った。 「この子は柑南(カンナ)よ」 「よろしくね、しょーちゃん!」 笑顔を浮かべる子供。 それに吊られて、俺もヘラリと笑ったんだ。 [*過去へ] [戻る] |