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CrossRoad
見つけたもの 【実菜】

 テスト時間終了のチャイムが鳴り響いた。


解答用紙を回収されると同時に席を立つ。


「終わったぁー。」


「終わったって……あんた。まだあと二日あるんだよ。」


すかさず突っ込みを入れられる。


振り返ると咲智がいた。


秋谷咲智(あきやさち)――。


私と同じクラスになって二年から仲良くなった。


部活とかは入ってないけど、運動は結構出来る。

あっけらかんとしててすっごく親しみやすい。

年上の彼氏がいてなんか大人びている気がする。


「いいでしょ別に。部活もテスト中は休みだし、これから千晴の家で一緒に勉強するんだから。」


「あらあら、お家で何の勉強をするんだか。」


「咲智ー。あんたすぐ変な方に持っていく。ちゃんとした勉強っ。」


咲智は結構エッチだ。


「変な方って何の事かな?」


「もうっ。知らないっ。」


咲智にからかわれたのに気付いて顔が赤くなる。


「実菜ー、顔赤いよ?照れたの?実菜エロいのに?」


S気たっぷりに、背けた顔にわざと覗き込みながら言ってくる。


「それは咲智でしょっ。あっち行ってっ。」


言いながらぐいっと押す。


「つれないなぁ。千晴にはくっつくくせに私は突き放すんだ。」


キッと睨んでみたが、咲智は笑って涼し気に受け流す。


かなわないな……。

力が抜けた。


「わかったから。もうおしまい。」

溜め息と一緒に言葉が出ていく。


「もう?残念…。あっ、私も千晴に勉強教えてもらおっかな。」


いつも思い付きで言葉にするからびっくりする。


「ちょっと……本気で言ってんの?」


せっかく家で二人になれるのに……。


「んっ。千晴って見てると結構かわいいよね。勉強終わった後、違う勉強手取り足取り教えてあげたりとか……。」


にーっと笑いを噛み殺して私の顔を覗き込む。


「ちょっ…、やめてよっ。駄目っ。千晴に手出したら知らないからっ。大体彼氏いるでしょっ。」


またからかわれた。

いっつもひっかかってしまう。


「かーわいいねぇ、実菜は。盗ったりしないって。でも、男はわかんないよー。好きって気持ちと性欲は違うって言うじゃん?」


耳元に口を近付けて悪戯っぽく言う。


「はいはい、おしまい。おーしーまーいっ。席に戻りーよ。先生来たよ。」


ドアに先生が見えたから話を終えるのに調度よかった。


「あらっ。終わりか。んじゃまた。」


ひらひら手を振って少し離れた自分の席に戻っていく。


それと同時にホームルームを始める為の号令がかかった。






「千晴、ここがよく分からないんだけど……。」


ノートを指差して聞く。


「どれ……?ああ……ちゃんとひっかかってるじゃん。それをXにするとYの値がまとまらないんだよ。これをXとして考えるとYの式が出てくるだろ?そうしたらこの文でもう一つの式が出来るから後は代入してやれば解けるよ。」


教科書の問題と照らし合わせながら説明してくれる。


「へー、そうやって解くんだ。てか千晴凄すぎ。よくわかるね、こんなの。」


同じ先生から習ってるはずなのになんでこんなに差が出るんだろ?


「たまたまだよ。俺だってわかんないやつあるぜ。ただ数学はわからないままにはしないけど。」


得意気にもせずにあっけらかんとして答える。


そこがまたいいんだよね。


「千晴らしいね。ありがと。」


そう言うとまた問題に戻る。


「もうちょいしたら休憩しようぜ。俺は区切りがいいから飲み物とお菓子取ってくるな。」


「あっ、私もこれ終わったら調度いいから嬉しいっ。」


気付いたらもう一時間以上経ってる。


喉カラカラだったから素直に嬉しかった。


「分かった。待ってな。」


そう言うと千晴は部屋を出て行った。


千晴を見送った時、問題も調度終わったから今度は鞄から英語のノートを取り出す。


英単語帳を捜すが見つからない。


鞄に入れたと思ったのに……忘れたかな?


いいや、千晴に貸してもらおっ。


思ったが早い。

千晴の机の本棚の端の方にあった英単語帳を抜き取る。


抜き取った時に一番端の辞書と机との間に手紙があるのに気付いた。


そういえば部屋に入った時なんかバタバタしてたっけ?


勝手にいけないと思いつつ手紙を手にとると差し出し人を確認した。


『小楠由依』


「小楠……由依……って確か、元カノの名前……。」


遠くで足音が聞こえたから手紙を元の場所に戻すと、さっと元いた場所に座り直す。


何……?今の……?


考える間もなくドアが開いて千晴が入ってきた。


「お待たせっ。コーヒーでよかったか?実菜のは少し甘目にしておいたから。」


「あっ……うんっ。大丈夫。ありがとっ……。」


心臓の鼓動が早い。


動揺してるのを悟られないように気をつけながら口を開く。


「あっ、千晴……。英単語帳忘れたみたいだから借りるねっ。」


言いながらさっき取った英単語帳を見せる。


「あっ……。ああ、いいよ。俺使わないから。」


目線が机の方に行き、私の所に戻ってくる。


なんか今慌てたような気がする。


普段ならそうは思わない程度。


でも見てしまったからちょっとした事が気になって仕方がない。


いつの手紙なんだろう?


まだ付き合ってた頃のかな?


もしかして最近とか?


頭の中で自問自答を繰り返す。


何で元に戻しちゃったんだろ?


普通に『これ元カノからだよね?』って聞けばよかったじゃない。


もう……遅いか……。


何て書いてあるんだろ?


てか何で手紙なんてあるのよっ。



英単語帳を開くが頭にまったく入らない。


聞きたくて仕方がない。


千晴をちらっと見るが、特に何もなかったように勉強を始めている。


「んっ?どした?」


ちらっとみただけのつもりがしっかり見ていたらしい。


千晴が聞いてくる。


「ううん、何でもないよ。」


何でもなくないのにっ。


何言ってんの?私……。


「そうっ?実菜も食べなよ。」


ノート片手にポテトチップをパリパリ食べながら薦める。


「うんっ。ありがと。」


なんとか笑顔を作って返事をした。


きっと……何でもないはずだよね?


千晴……。


ポテトチップを口にほうり込むと、パリッと音をたてて崩れていった――。






たまたま見つけてしまった手紙――。


中身を見てない事で余計に気になってしまう。



偶然が必然を呼び、これからを変えていく―――――。



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