CrossRoad
その先は…
沈黙が続いた後、なんとか話を作ろうと言葉を出す。
「よく……俺が言った事覚えてたな。」
せっかく言葉にしてもまだ由依は黙ったままだ。
「それにしても……めぐも酷いよな?何でそんな嘘つかなきゃいけないんだ?」
一つの疑問だった。
めぐがあんな事言わなきゃ……。
いや、俺は晃治の事ばっかりだったから結局同じか……。
「ちは………が……だった…て……。」
声が小さくて聞きとれなかった。
「ごめん由依。電話が遠いみたいで聞こえなかった……。もう一回言って。」
「めぐ……千晴の事が前から好きだったって言ってた……。」
今度はちゃんと聞こえたけど、耳を疑った。
めぐが俺を……?
俺は由依の彼氏だったから由依と仲の良かっためぐともわりと話しはしたけど……。
「それで…すごい喧嘩したんだ……。私、あの時はいっぱい泣いちゃった。」
考えがまとまらないうちに由依が話し出した。
「私が千晴との事を楽しそうに話すのがすごい嫌だって……。めぐが…私だって好きなのに……って。それでいっぱい泣いて……それを晃治くんに見られちゃって……それで色々気を使わせちゃって……。」
そうか……。
そういえば別れる時に寛美しかいなかった。
めぐと由依の間にそんな事があってたなんて全然気付かなかった。
俺も確かにあの時はいっぱいいっぱいだったからな……。
お互い、考え過ぎてたって訳か……。
それで結局すれ違って……。
俺があの時ちゃんと聞いてたら……。
由依を信じてれば……。
たらればを言ってもキリがないよな。
俺達はもう別れてるんだから。
「千晴……私ね……千晴と一緒にいた時が一番楽しかったよ……。別れる時はこんな理由があったなんて知らなかったから……。でもわかってよかった……。千晴変わってなくて優しいし………。それでね……私……。」
ずっと会話が止まってたかと思うと由依がまた口を開く。
でも……この流れは……まずい――。
「ありがとう、由依。そういえば俺、今彼女がいるんだぜ。あの時はきつくって彼女なんていらないって思ってたけど、高校入って出来たんだ。」
由依の言葉を遮るようにして一気にまくし立てた。
由依からの返事は短かった。
「あっ……そうなんだ……。」
「時間なんて経ってみたら早いよな。また由依と話すなんてもうないと思ってたんだぜ。」
こういう時なんて言っていいかわからない。
思いつくまま言葉を並べる。
「……そうだね。私も……そう思ってた…よ。あっ、ねえ、随分長く話してるけど勉強いいの……?」
もしかして泣いてる……?
電話の声じゃいまいち分からない。
壁に掛かってる時計に目をやるともう二時間近く話してる。
由依の言葉の変化に気付かないふりして質問に答える。
「流石にそろそろまずいかな……。」
「だよね。……ねぇ千晴……また……電話してもいいかな……?」
必死に隠してるのが今度はわかる。
俺には実菜がいるのに……。
そんな声出されたら断れねーよ……。
まぁ、友達だしな……今は。
「いーよ。んじゃ、勉強するよ。またなっ。」
「うんっ。バイバイ……。」
通話をオフにする――。
最後は少し明るい声に戻ったかな……?
ケータイを充電器に置くと鞄から教科書とノートを引っ張り出す。
勉強するからと言って電話を切った手前、自然とそういう行動をとっていた。
机の上にノートを開いてみたものの頭の中は由依との電話の事でいっぱいだった。
『……わかってよかった……。』
って由依は言ったけど、わからない方がよかったんじゃないか……?
大体、めぐとそんな事があってたなんて……。
二股かけられてるって思ってたのかな……?
色々、話した内容を振り返る――。
久々話して楽しかったのは確かだけど……。
『それでね……私……。』
あれは、何て言おうとしてたのかな……?
思い上がりかも知れないけど……なんとなく分かったような気がして遮ってしまった。
その先は………聞けないよ……由依。
冷めきったコーヒーを一気に喉に流し込んだ――。
時間は流れゆく。
どんなに思っても過去には戻れない―――――。
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