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CrossRoad
理由

 由依から手紙が届いて三日――。


俺は頭の中のもやもやを消せずにいた。


実菜の顔を見るたび、話すたび今さら由依と手紙を交わす必要なんてないって言いきかせる。


ただ、そうは思ってもどうしても頭の中から消えてくれない。



なんで今なんだろう……。


手紙の内容はたいした事はない普通の内容にしかとれなかった。


時間が経って向こうもふっ切れていて、たまたま伊東に俺の話を聞く事があって懐かしくなってただ手紙を出したってだけの様な気がする。


由依の性格ならそんな所だろう。


それなら友達として普通に手紙位出せばいいじゃないか。


でも……実菜はどう思うだろう?



ずっと頭の中で同じ自問自答を繰り返しては考えないようにする。


そして三日が過ぎていた。


同じ様に考えながら売店にコーヒーを買いに来ていた時、無意識にレターセットの前で足が止まっている事に気付く。


本当は手紙を出して別れる事になったいきさつを知って、全てをすっきりしたいのは自分でも分かってる。



けじめなんだ――。


そう自分に言いきかせると、レターセットを手にとった。





「ちーはるっ。」


クラスの友達と好きな音楽について熱く語ってた時に声をかけられて、ちょっとびっくりした。


「実菜。どうした?」


友達にちょっと待ってろって言って振り返ると、さっき自分のクラスに戻ったはずの実菜に声をかける。


「それが……次英語なんだけど訳したノート忘れてきちゃったみたいで……千晴貸してくれない?」


言いながら笑顔で可愛いらしく首を少し傾ける。


何気なくやってるんだろうが、その仕草がいい。


「おまえ……可愛いよな。」


「ちょっ……急に何言いだすのよっ。恥ずかしいじゃない。ノートっ、早くっ。」


手が一瞬顔に行くが、すぐにノートの催促の為俺の目の前に戻ってくる。


「なんかお前らの周りだけ熱いぞ。いちゃいちゃすんなら向こう行けっ。」


にたーっと笑いながら裄人が囃し立てる。


中村裄人(なかむらゆきと)――。


同じクラスで部活も同じバスケ部。

態度は悪いが仲間思いのいい奴だしオシャレだ。


「もうっ、裄人くんっ。ノート借りに来ただけでしょっ。千晴もにやにやしてないで早くっ。」


実菜が照れておたおたしてるのが可笑しい。


「ああ、わりわりっ。ほらノート。」


差し出されたノートをさっと取るとちょっとふて腐れた様に実菜が言った。


「もう千晴にノートなんか借りに来ないっ。」


「いいのか?んじゃこれからノート見せねーぞ?」


笑顔のまんま実菜に聞き返す。


「あっ…………やっぱり来る。」


実菜も頭はいい方だ。ただ分からない所は俺が教える事が多かった。


「んっ、素直でよろしい。」


「ずるいっ。人の弱みに付け込んで……。」


恨めしそうな目でじっと見ながら言う。


「なんか言った?」


実菜の態度が可笑しくて笑顔が元に戻らない。


「なーんにもっ。喜んで貸して頂きます。」


そう言うと可笑しそうに笑った。


「だーかーらっ、お前ら熱いって。早く帰れ実菜っ。」


裄人が呆れながら意地悪く言う。


「はいはい、帰りますっ。またねっ、千晴。」


裄人に、いーって顔をするとそう言って教室を出て行った。



実菜が出て行くと何事もなかったようにさっきの話しの続きに戻る。


少し話してたらすぐ昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴った――。





今俺は実菜が好き。


それは変わらない。


別れたいきさつだけ聞いたら終わり。


実菜は彼女。

由依は昔の知り合い。


頭の中で色んな理由付けをしていった。


手紙の返事を書く為に―――――。



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あきゅろす。
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