CrossRoad
進路
うちの学校は暖房がついてないから冬の教室は底冷えする。
制服の下に色々着込んでないとふるえて授業どころじゃない。
ふと時計に目をやると、もうすぐ授業が終わる時間を長針がさしていた。
と同時にチャイムが鳴る。
「それじゃここまで。来週小テストするからちゃんと復習しておくように。」
先生が言うとクラスがいっきに弾けるように騒ぎ出した。
「この間もテストしたばっかじゃん、またすんのー?」
「お前ら……来年の今頃は受験だぞ。模試だって三年になればどんどん入ってくる。しっかり勉強しろ。」
それだけ言うと日直に終わりの号令を促して挨拶をすると教室を出ていった。
教科書とノートを机の中に突っ込むと、席をたって廊下に出た所で声をかけられた。
「千晴っ。今千晴の所に行こうと思ってたんだけど……トイレ?」
振り返ると実菜がちょっと小走りで近付いて来ていた。
実菜とは同じ理系だけどクラスは階が違う。
たまにうちのクラスに来るか、廊下で話をする位だ。
「いや、寒いから売店にコーヒー買いに。……実菜も来るか?」
「おごってくれるの?」
悪戯っぽく言うが、間髪入れずに答えを返す。
「ばーか、大分行って今金欠なの。知ってるだろ?」
そう言うと時間もないし売店に向けて歩き出す事にした。
「冗談だって。一緒に行く。……私がおごってあげよっか?」
駆け寄ってくると、得意気な顔して聞いてくる。
「んにゃ、いい。女におごって貰うのはなんか嫌だ。」
「そーいうとこ堅いよねぇ。まっ、女としてはいい事だけど。」
そう言うとふふっと笑った。
「ねぇ、選択授業決めた?」
「ああ、理科と社会?決めたっていうか決まってるって感じかな。化学よりかは物理のが得意だし、日本史はどーも苦手……だから地理かな。」
売店のドアを開けながら言うと実菜がふて腐れて言う。
「だよねぇ。そんな気がしてた。あーあ、私と全く違うんだもん。これじゃ三年もまたクラス違うなぁ。」
実菜は前から看護系に進みたいって言っていた。
自然と生物を選択する事になるし、実菜は地理が苦手。
大体俺は専門学校に行きたい訳だから、元々大学進学希望の実菜とは同じクラスになる可能性は低い。
「しょうがないって。でも同じ階にはなるんじゃないか?」
それだけ言うと売店のおばちゃんにホットのキリマンジャロを頼んだ。
「そうだよね。今よりかはましかな。一年の時は来てくれてたのに階が違うと千晴ちっとも私のクラスに来てくれないんだもん。」
相槌はうつが、他の不満が飛び出してくる。
言いながら実菜はお茶を頼んだ。
「実菜のクラスに行くとなんかめっちゃ見られるから入りずらいんだよ。その点、うちのクラスはそんな事ないだろ?みんな実菜が来るのに慣れてんだよ。」
コーヒーを飲みながらまた売店のドアを開ける。
「それは……そうかも……。」
俺に続いて売店を出ると実菜は納得したくないようだが渋々納得する。
その様子を見てたまには実菜のクラスに行ってやるかと思った。
たまに……な。
行った時の様子を思い浮かべるとやっぱり躊躇する。
階段の踊り場で実菜と少し話した後、それぞれのクラスに戻った。
進路かぁ……。
みんな特に言わないけど、色々考えてんだろうなぁ。
机の中から次の授業の教科書とノートを取り出すとチャイムが鳴った――。
これからの事を考え、色々な事を思う。
中学生の時とは違い、高校生になると見えるものも変わって来る。
何も変わらないようでいて、少しずつ大人になっていく―――――。
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