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CrossRoad
信じる気持ち

何も変わらない日常――。

ただそこに千晴がいないだけ。


それだけなのにどうしてこんなに気持ちが晴れないんだろう。


学校に来て……陸上の練習……部活……。


何気ないように見える毎日だけど、少し違って来た。


ずっと待ってるのに何も言って来ない。


めぐが千晴に手紙を出した事は千晴に聞いて知っている。


千晴が私に話す事位はめぐにも分かるはず。


中嶋さんは『手紙を出したら返事が来たよ。』ってちゃんと言ってくれた。



大体出す前に一言言ってくれたらこんなにもやもやする事なんてないのに……。


その後も何も言ってくれない。


もうあれから一ヶ月以上経つから今さらな気もしてこっちから聞きずらい。


でも、今も手紙出してたりするかも……。

もしかしたら電話もしてるかも……。


色んな事が頭の中をよぎっては振り払う。


めぐは親友なんだもん。


きっと言ってくれる――。



そうは思っても最近なんかめぐの様子がおかしい気がする。


休み時間も部活もよく一緒にいたのに最近はそうでもない。



避けられてるのかな……。


不安ばっかりが募る。

嫌な考えを振り払うと、まとめた荷物を持って部活に向かう――。





「それじゃあ今日からパートごとに分かれて練習ねー。」


それぞれが楽器を持って好きな場所に向かう。


「めぐ、寛美、いつものとこ行こっ。」


「うんっ。ちょっと待って。すぐ準備するー。」


寛美がいそいそと楽器をケースに直しながら言う。


「私は行けないよ……。今回からトロンボーンに変わっちゃったから。この子達に教えなきゃならないし……。」


めぐが後ろにいる後輩達を見ながら言う。


「そっか……。もうユーフォ(ユーフォニウム)じゃなかったんだよね。……しっかり教えてあげてね。」



寛美と目を合わせるともう準備が出来ていた。


「それじゃ私達行くね。」


「うん……。頑張って……。」





「……ねぇ、由依ちゃんめぐと何かあったの?」


練習が一段落した所で不意に寛美が口にした事にドキッとした。


「えっ……?何で?何もないよ……。」


「そう?ならよかった。」



寛美は何気なく口にしただけなんだろう。


それ以上は特に何も言わなかった――。


だけど、何も知らない寛美だってそう思うって事は、やっぱり何かある気がする。



千晴はめぐとの事なんて何も言わないから、ほんとに何もないと思う。


でも………。



不安ばかりが大きくなっていくばかりで、苛々する。


親に怒られてから電話の回数は減ったけど、話してる時の千晴はいつもと変わらない。


千晴を私は信じてる。



めぐの事も信じたい。


だけど信じられるような態度をめぐはとってくれない――。



このまま信じて待つか……。


思い切って聞いてみるか……。



どうしたらいいんだろう……。




今まではすぐそばにいて何でも分かっていた気がする。


離れてしまった事で思わなくていい事を思い、気にし、信じたい気持ちと信じられない気持ちが交錯する――。


少しずつ何かが崩れ始めていた―――――。



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