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CrossRoad
いない事が

誰もいないのを見計らって机の上に並べて出してみた。


7冊の日記――。



1冊目から手に取ってパラパラっとめくっていく。

シャーペンで書かれた味気ない文字。


まだ書き始めで少しぎこちなさが残ってる。


この頃はお互いの事まだよく分かってなかったんだよね……。



2冊目、3冊目と読み進める――。


途中から色ペンでカラフルに変わったページが続いていく。


2年生になって同じクラスになっても書く事はいっぱいあった。

いつも目に付くから感じる事、いっぱいあったなぁ……。


パラパラとめくっていると部屋の扉が不意に開いてびっくりした。

慌てて日記を閉じる。


「由依ー。何?もう勉強してるの?」


美依が私に近付きながら言ってきた。


「ちょっと、美依っ。いきなり入って来ないでよ。」


日記を抱き込んで美依から隠す様にするが、隠しきれない。


何をしていたのか理解した美依が悪戯っぽく言ってくる。


「なーんだ。毎日の様に電話してるのに淋しいの?」


「違うわよっ。ちょっと見てただけなんだから……。別にいいでしょっ。」


その通りの事を言われて恥ずかしかったが、悟られないように強がってみせた。


「ふーん、そう。……そういえば千晴くんから学校に手紙届いてたね。由依も手紙出したんだよね。私も書こうかなぁ……。」


調度入れ違いで千晴から学校に手紙が届いていた。


それとは別に私にも、新しい学校の事と想いが書かれた手紙が届いていた。

学校の手紙とは違う本音が書かれてあって、私だけが知ってるっていう優越感がある。


「なんで美依が手紙書くのよ。やめてよ。」


美依が千晴にどんな事書くか分かったもんじゃない。

それに自分以外の人が手紙のやりとりをしてるのは正直嫌だった。


「いいでしょ別に私が出したって。それに中嶋さんも出したって言ってたし。由依の事よろしくってちゃんと書くから。」


「絶対駄目っ。美依の事は私が書くから書かないでっ。……中嶋さん、千晴に手紙出したの?」


美依が手紙を書く事よりもそっちの方が気になる。


「あれ?知らなかったの……。まっ、クラス違うからね。気をつけた方がいいんじゃない?中嶋さん、千晴くんの事好きだったみたいだから。」


それは知ってる。めぐが多分そうだって言ってたから。


千晴がいないだけでどんどん不安になる。


電話で話してる時だけ満たされる――。


私の不安さが伝わったのか、さっきまで意地悪ばっかり言ってた美依が急に優しく言う。


「あっ、でも大丈夫だよ。由依からとっちゃおうとかじゃないって。私も釘さしとくから。」


「……うん。ありがと。」


少しほっとした。


「ほらっ、元気だして。……そういえばもうすぐご飯だって。行こっ。」


いつもは美依の方が妹みたいなのに、肝心な所はしっかり押さえるんだから……。


「うん。」


日記を机の中にしまうと席を立った――。






「こっちは特に変わらないなぁ。クラス変わってもみんな小学校から一緒なんだもん。」


千晴の質問に答えながら思う。

離れてるからこそ電話ごしに聞こえてくる千晴の声が余計に心地よく感じる。


「そりゃそうだよな。あっ、そういえば今日めぐから手紙が届いたぜ。」


千晴の言った言葉に少なからず同様した。



めぐが……?


何で?一っ言もそんな事聞いてないっ。


友達なんだから言ってくれたらいいのに……。

なんで内緒にしてるの……?



頭の中でごちゃごちゃ考えてたら千晴の声が聞こえなかった。


「……由依?聞こえてる?」


「あっ、うん。聞こえてるよ。めぐから手紙来たんだぁ……。そういえば中嶋さんからも手紙来たでしょ?何で言ってくれなかったの?」


同様を悟られないように話を続ける。


「あっ、忘れてた。ごめん。その日あの面白い事の話ですっかり頭から消えてたから……。」


思い出して少し可笑しくなった。

千晴の学校の先生の話――。


「それでね……。いいよ、気にしてる訳じゃないんだから。」


千晴は変わってない――。

なんかそう思えて美依と話してた時の不安が吹き飛んでいた。



最近の中で千晴と話してる間が唯一の幸せの時間――。



つい長電話になってしまう。


「あっ、お母さんがもういい加減にしなさいって……。」


まだ話したいのに……。


「そっか……。まだ足りないけど、仕方ないね。明日は俺が電話するよ。」


「うんっ。待ってるね。……それじゃまた明日。」


「うん。バイバイ。」


電話を切ると一気に淋しさが込み上げてくる。



会いたいよ……。


気持ちが押さえられないで泣きそうになる――。





離れてる事で知る大事な気持ち。


離れてる事で募っていく不安。



私に出来るのは、千晴を信じる事だけ―――――。



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