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CrossRoad
唐突な報せ

「なぁ、お前らっていつ別れたんだ?」


「はっ?」

珍しい電話の開口一番で言った伊東の言葉の意味がよくわからなくて聞き返した。


「だから、いつの間に別れたんだよ?千晴何も言わなかったから知らなかったぜ。」


聞き返したのによくわからない事を伊東が続ける。


「伊東……何言ってんの?俺達別れてないぜ。」


「はっ?うそっ。……でも由依ちゃん最近毎日後輩の晃治と一緒に帰ってたし……。女子の連中があの二人付き合ってるって言ってたから……。」


伊東の同様した声が電話口で響く。


それ以上に俺は伊東の言った言葉に同様した。

そして信じられなかった。


晃治と毎日一緒に帰ってる……?

付き合ってるって言ってた……?



あと2日で夏休みだ――。

この前電話したのは二週間位前だが、その時は普通だった。


別れるとかそんな話なんて一言も出て来てない。


「……誰と、誰が付き合ってるって?」

どうしても信じられない思いと同様も手伝って、ちゃんと聞こえてたはずの言葉をもう一度聞こうと伊東に質問してみた。


「由依ちゃんと……晃治。」


伊東が悪い訳じゃないのに俺の聞き返した言葉が冷めてたのか、申し訳なさそうに言葉を絞り出している。


「いやいや、伊東も冗談が上手くなったな。」


信じたくない――。

それに本当に俺達は別れてない。


空元気ともとれる大きな声で電話口に向かって言った。

そしてそれを肯定する言葉を伊東が言ってくれるのを待った。


緊張しているのか、唾を飲み込む音が電話ごしに向こうに聞こえるんじゃないかと思った。


「それが……一緒に帰ってるの何回も見たしな……。晃治の家由依ちゃん家とは反対だし。……直接由依ちゃんに聞いた訳じゃないから何とも……な。」


聞きたくない言葉だった。

「でも……ほんとに俺達別れてないぜ……。」


その事実だけが俺を支えていた。


「お前がそう言うなら信じるけどな。本人だし。でも一緒に帰ってるのはほんとだぜ。いいのか?」


「いい訳ねーだろっ。……わかった、後で電話してみる。なんか分かったら教えて。」


もう三ヶ月近く会ってない――。


突然の話も重なって、わかり合えてたと思ってた由依が、今どういう気持ちかがわからなくなってしまった。



「わかった。ちょっと調べてみる。……っと、こっちのが本題だったんだけど、お前いつこっちに来るんだ?」


玖珠で一番仲良かったのは伊東だった。


何度も家に遊びに行ってたのもあって伊東のおばちゃんとも仲が良い。


玖珠に遊びに行く時に泊まらせてもらえる事になっていて、もう夏休みに入ろうかしてるのに日にちがはっきりしてなかったからしびれをきらして電話してきてくれたのだ。


かといって、急に話が楽しみにしていた事に変わっても今いち乗り気にならない。


「ああ、連絡するの忘れてた。……部活県大会があるからそれの勝ち残り次第なんだよね。8月6日なら確実に行けるからその日にしようかなと思ってたんだけど……。伊東の都合は?」


声に力が入ってないのが自分でもわかる。


「いいんじゃないか。一週間位こっちにいるつもりだろ?花火大会も調度あるし。」


伊東が元気付けようとしてくれるように楽しそうな声を出している。


気を使わせるのも悪いと思ってその誘いに乗って返事をした。


「だろっ?花火大会見たいからな。一週間、よろしくなっ。」


「おうっ。まかせろ。そしたら6日な。んじゃまたな。」


「おう。前の日にまた電話する。バイバイ。」



最後は楽し気に電話を切る事が出来たが、さっきからずっと頭に引っかかってるもやもやが一向に無くならない

というか電話を切った今それしか頭にない。


いったいどうなってんだ――。



不安な気持ちが募る中、切ったばかりの電話に目を落とすと由依の家の番号を押していく。


途中ではっとして時計を見た。

夜の10時をとっくにまわっている。


さすがに今から電話するのは悪いか……。



今すぐ聞き出したい思いと、 何も聞きたくない思い――。



『……一緒に帰ってるのはほんとだぜ。』

伊東の言った言葉が頭の中を反芻する。



不安な気持ちを時間のせいにして、受話器を置いた―――――。



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あきゅろす。
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