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CrossRoad
繋がり

「最近どーお?部活きつい?」


電話ごしに聞こえてくる由依の声に優しさが込められてる気がしてつい顔がほころぶ。


「ほんっときつい。コーチが鬼に見えてしかたないよ。」


電話の向こうで由依がくすくす笑う声が聞こえる。

顔が見えないのが残念で仕方ない。


こっちの中学のバスケ部は元々のレギュラー五人がめちゃくちゃ上手かった。


地区大会は優勝して、次の大会がまだ控えている。

大分の方は地区大会で負けてしまってもう引退してしまったらしい。


こっちはまだまだこれからで、追い込みの練習の激しさと暑さで本当にコーチが鬼に見える。


「こっちはもうみんな勉強頑張ってるよ。千晴がいないから大変。それに陸上の練習もあるしねー。」

もう嫌っていうような落ち込んだ声。


「一応受験生だもんねー。今からやってれば大丈夫だよ。こっちは全然そんな雰囲気じゃないもん。……陸上懐かしいなぁ。こっちは大会とか出ないみたいだし。まあ部活でそれどころじゃないけど。」


由依の落ち込んだ声は出来れば聞きたくない。

励まそうと思ってなるべく元気な声を届ける。


「そうだね、頑張ろ。……ねぇ、夏休みこっちに遊びに来るって言ってたよね。……早く来ないかなぁ。」


「大会があるから8月に入ったらだな。あと一ヶ月ちょっと……。」


待ち遠しい事に関して時間は異常に長く感じてしまう。



ゴールデンウィークに由依が玖珠から田川まで家族と一緒に家に遊びに来てくれた。


おじさんもおばさんも久々に会ったが相変わらず賑やかだった。

美依と由依には引っ越して一ヶ月ちょっとしか経ってないが、随分久しぶりな気がして会う時少し緊張してしまった。


最初は少しだけぎこちなかった気もしたが、すぐにそんなものは吹き飛んで久々の楽しい一緒の時間を大いに満喫した。


その分帰る時は辛さが倍になってしまった。



あれから今度は二ヶ月近く経つ。



電話で声を聞く事が由依と繋がってると感じる唯一の手段だった。



最初はどちらともなく毎日。


久々に会った直後は週に2、3回。


部活や陸上、テストとか相手の事をお互い考えて週に1度に回数が自然に減った。



そして今日は気付いたら1週間以上経つから由依の声が聞きたくなって電話したのだ。


電話は声が聞こえるからいいが、逆に切る時に淋しさが募る。



それにお互いに楽しかった事とかを話すと、返ってくる言葉に淋しさが伝わってしまって話しずらくなってしまう。



でも声が聞きたい――。


そして会いたい――。



離れてる事が恨めしい。

思ったら会いに行くなんて事が出来ない中学生の現実が憎い。



「長いね……。でも、もう少しの我慢だね。」

また由依の声が落ち込む。


「期末テスト頑張って、陸上の練習やってたらすぐだよ……。」

俺の声も思わず落ち込んでしまった。


「そうだよね……。うん、テスト勉強頑張るね。千晴もテスト近いでしょ?……そろそろ切る?」


今度は由依が元気づけるような声を出してくれた。


「確かにこっちももうテスト近いんだよなぁ……。ほんとは切りたくないけど……そうも言ってられない……な。……切る、か……。」


名残おしい――。


「私も切りたくないけど……。……そしたら、また……ね。バイバイ……。」


「……うん、またな。バイバイ。」



ゆっくりコードレスの受話器の通話をオフにする。


「あと一ヶ月……か。」


やっとあと一ヶ月という思いと、まだ一ヶ月もあるという思いが混じって知らないうちに溜息をついていた。


首を思いっきり振って淋しさを吹き飛ばす。


あと一ヶ月経ったら会えるんだ。



前向きに考え直して風呂場に向かう。


淋しい気持ちを部活の疲れと一緒に洗い流してしまおうと思った―――――。



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あきゅろす。
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