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CrossRoad
違う日常

場所は違っても季節は同じように流れる。


並び立つ桜の木が風に揺られ、舞い散る花びらのさまざまなピンクが色鮮やかで幻想的な世界が目の前に広がっていく。


感動すら覚える景色を前にして、だからこそ切なさを一層高まらせる。


出来る事なら由依と一緒に見たいからだ。



地元に戻っての中学3年の新しい生活はもう始まっているが、後ろに引きずられる想いが募ってしかたがない。



特に新しい中学に馴染めない訳ではなかった。

同じクラスに転校生がなぜか3人も一緒になったし、『バスケ部の副キャプテンだった奴が来る。』と噂になってたらしく、バスケ部連中がこぞって挨拶に来てくれて転校初日に部活にまで顔を出した。


そして元々地元という事もあって周りとすぐにうちとける事が出来て安心した位だ。



ただ、まだ日が浅いのもあるせいかどうしても前の中学と比較して、つい物思いに更ける。


「みんなに会いたいな……。」


思わず呟く。

ただ、『みんな』とは口にしたものの、実際は由依に1番会いたかった――。




「ただいまー。」


今度の中学は歩くと30分はかかる。

くたくたなのもあってつい力の抜けた声になる。


「おかえり。そういえば大分の友達から手紙が届いてたわよー。」


台所から母親の返事が返ってきた。

鞄を自分の部屋に置きに行こうとしてた所を慌てて引き返す。


「ほんと?誰からだった?」

知らずに声に元気が戻ってくる。


「確か横田…めぐみさんって方だったかしら…。」


「めぐか…。手紙は何処?」


すでに手紙を取りにいってた母親から受け取ると、いそいそと自分の部屋に戻って手紙を開いた。



結局みんなに引っ越しの事は知られていて、顔を見てさよならは言えたがなんとなく心残りがあったのと、始まってすぐのこっちの状況も教えたくて学校宛てに手紙を出していた。


手紙を出して一週間が経つ。


由依には前もって連絡先を教えていたのもあって手紙を出したのと同じ位に手紙が届いた。

他に中嶋京子(なかしまきょうこ)からも昨日手紙が届いていた。


そして今日はめぐからだ。


男連中からは手紙は届かないが、みんなが今いるから、と伊東から電話がかかってきた。


まあ確かにあの男共が手紙を書く訳ないか……。


あれこれ考えながら手紙を読んでいく。


こっちはどんな感じか、とか友達は出来たか、とか、ありきたりな内容ばっかりだったが、離れた友達から手紙が届くというのはやっぱり嬉しいものだ。


俺のいない学校は少し淋しく感じるとか、少しお世辞じみた内容も含まれてたが書かれてると嬉しく感じる。


由依とめぐと寛美は仲良かったから他の女子よりかは俺もよく話してた。


「懐かしいな……。」


まだ一ヶ月もたたないのに随分時間が過ぎた気がする。


大分にいた2年間で色んな事があった。


学校や部活、陸上も今思えば楽しかった事ばっかり思い出す。

みんなで遊びに行ったり、買い物しに街に出て行ったり。

買い食いしながら帰った通学路――。


色々思い出しては今いるこの場所とはやっぱり離れているんだな、と実感する。


新しい通学路も、見上げる空は同じでも今までの景色とはまったく違う。


考えてもしかたのない思いが沸き上がるが、心の奥にしまい込む。

ここの連中もいい奴ばっかりだ。



今更くよくよしても仕方ないしどうしようもない――。



心の中の葛藤が一段落すると手紙の中身を元に戻して机に向かう。


由依にも中嶋にももう返事を書いていたから、余りのレターセットがまだある。

引っ張り出すとペンを走らせた―――――。



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あきゅろす。
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