[携帯モード] [URL送信]

CrossRoad
確かな絆

俺は怖かった――。

由依にうち明ける事で何もかもが壊れて行くのが……。


今までの関係でいられなくなるんじゃないか……。


考えれば考えるだけどんどん悪いイメージが出てくる。



それを軽くすくいあげるような……冷たく凍えそうになりかけた身体を暖かく包み込むような……。

由依の言葉にどれだけ救われたか――。



「大丈夫だよ、きっと。私達…。離れてもずっと、一緒にいよう。」



寒い冬のいつもの帰り道。

突然の話に少なくとも最初は戸惑いを隠せなかったのは顔を見ればすぐわかる。


下を向いて俺の話を聞いていた由依がどんな気持ちだったかも想像出来る。


手に持っていたカイロをキュっと握りしめて言ってくれたその言葉。


笑顔と一緒に返してくれた言葉に少しの不安が入り交じっていて、俺を見上げる目には次の言葉に不安と期待を漂わせてるように見えた。


思わず頬の筋肉が緩む。

由依の頭を優しく撫でてやる。


「正直、ずっと不安だったんだ。もう終わりになるんじゃないかって……。」


「そんなことないっ。……いや。離れるのも嫌だけど、千晴と別れるのはもっといやっ。」


必死な目だった。

瞳が濡れて光っている。


今は逆にそれが嬉しくもあって、由依の頭を抱え込んで自分の胸に押し当てた。


「俺も嫌だよ。だから由依がなんて言うか怖かったんだ……。」


「私、こんなに好きなんだよ。会いに行く。電話だってする。…離れたってきっと大丈夫…。」


顔を上げて腕の中から俺の顔を見上げる由依がこんなに愛おしい。


「俺だってこんなに好きなんだから。泣かないで……。大丈夫。由依もそう思ってるんでしょ。」


俺の胸に顔を埋めてぐすぐすいっている由依をひきはがす。


「……うん。」


「ひどい顔だな。」


「もうっ。見ないでっ。」


顔を背けて制服の袖で急いで涙を拭う。


「こっち向いて…。」


「…いや。」


由依の頬に手をおいて、もう一度優しく言ってみる。


「こっち向いてみて。」


「恥ずかしいから……いや。」



ゆっくり髪を撫でながら頬においてた手で顔をこっちに向けさせると、唇を重ねた。


由依も言葉とは裏腹に素直に応じる。




短いようで長いキス――。


お互いの感触をしっかり確かめ合うような。


「えへへっ。……私ね、夢があるの。」


顔を離した由依の頬には涙が伝っていた。


拭いながら言葉を付け足す。


「お嫁さん。千晴のお嫁さんになって、幸せになるの。」


な…んてかわいい事言うんだ……。


思わず由依を抱きしめる。


「痛いよ、千晴。」


由依の言葉に構わず力を込める。


「幸せになろうな。…由依と俺と二人で。」


俺の腕を掴んでいた由依の手にも力が入ってくる。


「うんっ。」





寒さが身に染みる冬の空の下、自分達には他に何もいらないと思えるような何かが繋がっている気がした。



中学2年の冬――。



これからどんな事があっても大丈夫と思えた―――――。



[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!