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CrossRoad
好きって思う事

言い過ぎた……かな。


あんなに頭に血がのぼったのは初めてだった。


でも、由依は言ってる事とやってる事めちゃくちゃだよ…。


あーもうっ。

頭の中ぐちゃぐちゃ。

考えるのやめよ。



下駄箱を出て部活に行こうとしたら立花先輩がまだ待っていた。



「…ごめんね。」

うつむいて申し訳なさそうに言う。


「何がすか?立花先輩は何も悪くないっすよ。」

さっき由依に言った事で、立花先輩に対して普通に接しようと思った。

それだけでも随分すっきりした感じだ。


「俺の方ですよ、謝るのは。さっきもですけど、ほんとにごめんなさい。」


「ううん。私のせいでしょ、さっきの……。由依ちゃん大丈夫だった?」


「あー、まぁ……さぁ、…どうだろ?」


俺が聞きたい。


「由依ちゃん…怒ってるの?」


「あー、怒ってるというか…俺が怒ったっていうか……。」


「千晴が…?」


「んー…まぁ色々あって…。立花先輩は気にしなくっていいっすよ。」


「気にしなくていいって……気になるよっ。」

真剣な目で見つめてくる。


「ごめん先輩。俺もよくわかんない…。そろそろ部活いかないと怒られちゃうから…。また明日。」


行こうとしたらまた手をつかまれた。


「その明日は……大丈夫?」

不安そうな顔――。


俺は今つくれる精一杯の笑顔を見せた。

ひきつってるかな?


「約束しますよ。大丈夫。……行きますね。」


「うんっ。また明日。」

最後に笑ってくれた――。





もう6時間目――。

今日は由依と朝からずっと口きいてない。


昨日の部活、バスケ部は終わるのが1番遅かった。


由依も待ってはいなかった。

もしいても一緒に帰る気にはならなかったと思うけど……。


帰る時も、家でも、学校でもずっと考えていた。


怒ってあれだけ言ってしまったけど、それだけに本心だと思う。


だから俺から謝ったりはしないって決めた――。



今日は生徒会はない。

ホームルームが終わったらオバチンや時松達と陸上の練習に向かった――。





由依は晃治と相変わらず話している――。


まぁ晃治がいつも話しかけに行くからしかたがない。


由依にはいつもの元気がないのははた目に見ても分かる。


俺は分かってはいるが気付かないふりして陸上仲間の連中とワイワイ騒いでいた。


練習が終わったら立花先輩が俺達の所に来た。



「ちょっと千晴借りていい?」


オバチンが答えると同時にはやしたてる。


「いいっすよ。」

「由依ちゃーんっ、立花先輩が千晴貸してってよー。」



ばっ……何を言い出す…。

反射的にオバチンの口を押さえる。


「何言ってんだよ。ただ話すだけだろ。」


由依がこっちを見たが、何も言わない。

晃治と話してたのを途中で切り上げて校舎に戻っていく。


みんなタイミングがわりーよ……。

頭痛くなってきた。


「立花先輩、行きましょ。」


オバチンを一睨みして歩き出す。

立花先輩が後を追ってきた。


「千晴……。なんか…ごめんね。」

階段の途中で立花先輩が止まって言い出した。


昨日から謝ってばかり――。


「謝んなくていいですよ。先輩は悪くないでしょっ。」

振り向いて答える。



「大体俺が先輩を避けてた方が悪い。ほんとにすいませんでした…。」


「やっぱり………。私の事が嫌ならそう言ってくれたら……。」

先輩の言葉を遮って言う。


「嫌な訳ないでしょ。あれは………。」

言おうか迷ったが、そのまま続けた。


「多分、由依がヤキモチ妬いたから俺が心配かけないようにって……。」


「私に……?」


「そう。それで昨日怒ったから追いかけたんです。」


「だけどっ……。由依ちゃん陸上の時いっつも他の男の子と話してるじゃないっ。千晴は……。」

必死になって言い出した先輩をまた遮って答える。


「だから昨日俺が怒って、喧嘩中。由依と話、してないでしょ?」


「……うん。やっと理由がわかった気がする……。でも、私が結局迷惑かけてたんだね…。二人、付き合ってるのに。」


「だーかーらっ、先輩は気にしないでいいって。俺が全部悪かったんですから。先輩にもいらない心配かけるし、由依と話しないのも俺が勝手にそうしてるだけなんですから。ねっ?」


うつむく先輩の顔を覗き込みながら言った。

いっつも元気いっぱいの先輩が元気がないのは調子が狂う。

元気になってほしかった。


顔をあげて真っ直ぐ目を見てくる。


「気にするよっ。気になるんだもんっ。ここの所の千晴、いつもの感じじゃないって分かるし、気付いたら目で追ってるし………。」

そこまで言うと『あっ』って顔をした。


少し黙ったままだったが、俺が口を開こうとしたら話しだした。


「……私の事…嫌な訳じゃないんだよね……?」


何でまた聞く…?


「昨日も、今日も言ったでしょ。嫌な訳ないです。」


また少し黙って口を開く。

「…私が千晴の事考えたら……迷惑?」


「別に迷惑じゃないですよ。」

簡単に答える。


「違うのっ。……もしよ…もし…、私が好きって思う事があったら……迷惑?」


目線を横にずらすと、立花先輩はそう言った。


誰が誰を好きって……?

頭が混乱した。

立花先輩が……俺を…?


何でそうなる?

自分で自問自答を繰り返す。


「……最近、避けられたり、色々あったから……昨日も…。余計に気になって………。でも、千晴には由依ちゃんがいて………。」


言葉を一生懸命つないでいく。


確かに立花先輩は可愛い。話しててすごい楽しいって思う。『嫌?』って立花先輩は聞いたけど、どう考えても好きな方だ。


だけど――。


俺は由依と付き合ってて、俺が好きなのは由依で……。

由依の笑った顔が頭をよぎる。


俺が好きなのはやっぱり由依なんだよなぁ。


喧嘩してても、考えてしまう。

改めて実感する。


「先輩…。すっごい嬉しいし迷惑なんて思わないけど………。由依と付き合ってるから、俺…。」


先輩が俺の目を見る。


「…うん。分かってる。口がすべって後戻り出来なくなっちゃった……。気にしないでっ。……忘れてっ。早く由依ちゃんと仲直り出来るといいねっ。」


目に涙が溜まってる。


気付かないふりして答える。

「…うん。ごめん……先輩。」


「謝らないっ。……ふぅー。避けられてた理由も分かったし、一件落着だねっ。」


涙が一粒流れたが、すっごくいい笑顔を返してくれた。


精一杯の笑顔だよな……。


「ほらっ。部活いかないと。」


ボーっとしてたら先輩がせかした。

「あっ…、うん。」


「明日からは由依ちゃんの前じゃ避けてもいいけど、それ以外は避けたら駄目だよっ。」


「避けませんって。由依がいてもちゃんと話しますよっ。」

俺も笑顔を返す。


「ほんとかなぁ?約束だよ。」

少し意地悪に聞こえるように言ってくる。


「約束。それじゃ行きますね。」


「うん。頑張れっ。また明日ね。」


笑顔で手を振ってくれる。



先輩の優しさに正直救われた。


ありがとう、先輩……。




もうほとんど日が落ちている。

はかなくも切なく感じる夜へと移りゆく空――。


色んな想いさえ飲み込んでくれそうだった―――――。



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