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CrossRoad
放課後の教室

すっかり葉も深い緑に変わり、強い日差しの中下校して行く生徒の制服も白さが際立つ。


――すっかり夏だな。


額ににじむ汗を拭いながら変わりゆく季節を感じた。



「財津。もうそろそろ体育館交代の時間だろ。外練切り上げて体育館行こうぜ。」


時間を見ながら財津のそばまで行って伝える。


「そうだな。」

「終了ーっ。体育館へ移動っ。1年は先に行って準備なーっ。」


財津がみんなに向かって声を張り上げる。

「はいっ。」


もう3年生も引退して、2年生主体の新しいチームになっている。


キャプテンは財津が指名された。1番キャプテンに向いていると思う。


そして俺は副キャプテンに指名されて財津と一緒に新チームをまとめていく事になっていた。



「優太、俺のボールもとっといて。」


片桐優太(かたぎりゆうた)――。


2年生と1年生の部員の数が一緒なんで、ポジションも踏まえて2年生一人一人に一年生が一人ついている。

俺についているのが優太だった。


「はいっ、千晴先輩。いいやつとっときますね。」


素直ないい奴。教えがいがある。


「じゃあ俺らもさっさとバッシュとってから行こうぜ。」



財津と並んで今日の練習をどうするか話ながら体育館へ向かった――。






毎日暑い――。

「教室にクーラーつければいいのに……。」


小声でぼやきながら窓の外を見て下敷きをうちわがわりにパタパタ扇ぐ。


暑さでついボーっとなる。


「……永里くんっ。永里くん。ボーっとしない。」


先生の呼んでいる声が中々頭に届いてこなかった。


「えっ……。」

周りからクスクスっと笑い声が聞こえる。


「外には何もないわよ。次の問題、お願いね。」


そういえば授業中だった――。

「次って何処?」

小声で周りに聞く。

「黒板の問い2。」

未央が椅子を後ろにひいて教えてくれる。


数学でよかった。前に出て問題を解く―――。





「千晴くん、さっき怒られてたね。」

由依が前の席に座って言う。


「ほんと。この調度いい温度のせいでね。」

暑さに皮肉の一つも言いたくなる。


「でもさすがだね。聞いてないのにスラスラ解いちゃうんだもん。」


「たまたまだよ。数学だったから運がよかっただけ。英語だったら全然だめ。お手上げ。」

両手を広げて上に軽く持ち上げる。


「ふふっ。そうなの?」

由依はよく笑う――。



「もう先生来た。戻るね。また、……放課後ね。」

最後の言葉だけ声をおとしてみんなに聞こえないように言うと、自分の席に戻っていった――。


放課後……か――。






「……んっ…。…はあっ………。」


俺と由依以外誰もいない教室に吐息がもれる――。


向かいに見える音楽室から隠れるように、俺達二人は見えない位置で抱き合っていた――。


お互いに目を見つめ、ゆっくりもう一度唇を重ねる。


舌が絡み合っていく――。


「……っん…。」

頭がふわふわしだしてとけていくような感じ――。


次第に唇がずれて俺の唇が由依の首元にゆっくり移動していく。


「…んっ……。……あっ……。」


お互いの身体を抱き寄せ、身体を委ねる――。



首から耳の方へ舌と一緒に唇を移動させる。


甘い香り――。


「あっ……。…っん………。」

甘噛みすると吐息がもれる――。


出そうになる声を由依が我慢する――。



一度身体を離してお互いの目を覗き込むと、由依がゆっくり目を閉じて唇を重ねてくる――。


制服の上から胸を触っていた手を、背中の方から制服の中に入れていく。


伝わってくる体温――。


お互いの身体をしっかりと抱きしめる――。


柔らかい女の子の身体――。


由依は男の俺の身体を違うように感じるのだろうか……。



トロンとする頭で、前に由依が言っていた事を思い出す――。

『ほんとに好きな者同士はね……、お互いの身体を求め合うものなんだよ……。』


少し照れながら言う由依がほんとに可愛いかった――。



制服の中の手を背中から前にもってきてブラの中に滑りこませる。

「…んっ……。」


手に触れる柔らかい胸を優しく触る――。


「あっ……っん……。……はぁっ………んっ…。」


重ねた唇が時々離れ、吐息がもれていってはまた重ねてくる――。



俺と由依は求め合う喜びと気持ちよさを知ってから、段々エッチになっていっていた――。


「……あっ………。…んっ……。」



――タッタッタッタッタッ……。


足音――。

「…誰か……来た……。」


由依の言葉と同時に離れ、急いで制服を正す。


「千晴ー。そろそろ練習始めるってよー。由依ちゃんもいいけど早くこいって財津が騒いでたぞ。」


伊東がドアを開けながら言う。

俺と由依は椅子に座りなおして伊東を出迎えた。


「わりっ。すぐ行くよ。先行ってて。」


伊東が戻って行くのを見送って二人で溜息をついた。

「びっくりしたね。」


笑いをこらえながら由依が言う。


「ほんとっ。焦ったぁ。」

額の汗を拭うそぶりをしてみせて、お互い目を合わせたら笑いが込みあげて来た。


椅子から立ち上がりながら由依が言う。

「ふふっ。でもちょっと残念。」


「何が?」

俺も立ち上がりながら聞く。


「えへへーっ。なーいしょっ。」


笑いながら人差し指を左右にチッチッと振って、軽いキスをする――。


こういう時は教えてくれない。笑顔だけ返す――。



「さぁーて、部活かぁ。」


「頑張ってね。副キャプテンっ。」


「おうっ。まかせろっ。また帰りなっ。」


階段の所で挨拶をかわして走り出す――。



中2の夏――。


いつまでも今のような時間が続く、続いていくと、信じて疑う事さえ知らなかった―――――。



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あきゅろす。
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